小1時代,私はそろばん、習字、そしてピアノをもれなく習いはじめたが、
そろばんと習字は1ヶ月ともたなかった。
「いちえんなーり、にえんなーり……」
ええいっ!やってられるかぁ!
そのうちボタンを押せば答えが出てくるような機械が発明されるさ!
すると5年後には電子卓上計算機(電卓)が出回り始める。
ほら見たことかっ!
硯で墨をごーりごーり…。
ええいっ!バカバカしいっ!
そのうち醤油のように押せば出てくる墨が出てくるさ!
これは電卓より早く流通するようになった。
ほら見たことか!
私には先見の明があった…とその頃は思ったものである。
ある日の習字の帰り道のこと。
習字の教室から家まではバス一本である。
しかし、その間の停留所は8ヶ所ほどあっただろうか。
私はバスを待っていた。
しかし、待てども待てどもバスはこない。
子ども用の腕時計などない時代である。
どうにもこないので、私はふと思いつく。
道はほぼまっすぐで、遠くに次のバス停が見えている。
反対を見ると相変わらずバスが来る気配がない。
よしっ!歩こう!
小学一年生になりたての私は、ちょこちょこと早足で歩き始めたのである。
次の停留所までの半分あたりまできたとき、
私の傍をバスが追い抜いていった。
走り出す私。
バスは次の停留所で停まり、人が乗り降りしている。
「まって!まって!」
心で叫ばながら、走る!走る!
無情にもあと50メートルほどで、バスは発車してしまうのであった。