参観日の算数の授業は「たしざんとひきざん」であった。


生徒が問題をつくり、みんなで解く。

「バケツに◯個の石が入っています。

そのあと◯個の石を入れて、◯個の石をすてました。

のこった石は何個でしょう。」


極めて簡単な問題なので、いくらでも問題がつくれる。

小1の児童は全員勢いよく挙手して、我先にと問題を発言し、全員が正しい答えを言う。


20回ほどこれを繰り返しただろうか、先生が

「ではそろそろ終わりにしよう」

と、授業のまとめに入ろうとした。


そのとき満を辞した私は、たった一人手を挙げる。

私「先生!はいっ!はいっ!」

先生「もういいだろう?もうすぐ時間だし」

私「先生、おねがいです!さしてください!」

私は絶叫していた。


先生「わかった…これで最後だぞ!」

立ち上がった私は、得意満面で

「バケツに◯個の石が…のこったのは?」

もはや陳腐となった問いをくりだす。

生徒たちはこぞって正しい答えを叫ぶ。

ところが私は「ちがいまーす!」という。


先生「どうしてちがうんだ?合っているぞ」

すると、私はこういった。


「バケツには穴が開いていました。」


先生「はいっ!オチがついたところで、今日はおしまいっ!」


万事この調子で私の小学校生活は始まったのである。


その日の夕刻、帰ってから母にひどく叱られたことは言うまでもない。