中心気圧877hPaにまで勢力を強めた台風22号は、

太平洋を一気に北上し、26日の夜伊豆半島をかすめ、神奈川県に上陸。

1000人を超す死者を出す大惨事を引き起こした。

 

特に雨の多かった伊豆半島は壊滅的なダメージを受けた。

のちに「狩野川台風」と呼ばれる巨大台風である。

 

我が家は狩野川が駿河湾に流れ込む河口の近くにあったのだが,

この川が氾濫したのである。

 

私は生後3か月。

まだ首が座るかどうかの乳飲み子である。

そんなころの記憶があるわけがない。

 

ところが,そのときの光景がいまだに思い浮かぶのである。

 

私は母に抱かれている。

母の顔は奈良の東大寺の廬舎那仏のように大きかった。

むろん私が小さかっただけのことであるが。

 

家の前は川になっていた。

その中を廃材でつくった筏のようなものを引っ張って,

「おーい!こっちだ!」と,大声と飛沫を上げながら父が近づいてくる。

 

私たちと父の間に茶色い物体が勢いよく流れていった…。