老人ホームでは,認知症爆裂の父であったが,
認知症になる前は,若干けんかっぱやいところはあるにしても,
まあまあ常識のある人間だった。
87歳で仕事を辞めたあとは,のんびり国内旅行でもしたいな
と言っていたが,そのころには認知症が進行していた。
何のためにそんなに働いていたのか。
どうしてそんなになるまで,会社は働かせていたのか。
肩で息をしながら,死に向かっている父を思うと,
人生って何なのかと思わざるを得ないのだった。
今日は14時からの正規の面会時間より早めに病院に行くと,
スルーパスでOKとのことで,速攻で8Fへ。
看護師さんも,僕が仕事があることを気にしてくれて,話が早口だ。
父は昨日横を向いていたが,上を向いてやはり苦しそうに呼吸をしている。
ときおり苦しそうに咳払いすると,こちらがビビってしまう。
看護師さんに促されつつ,父の手や足に触れると……冷たい。
酸素が末端に届いていないのだ。
「じっちゃん,〇〇だよ!」
「大丈夫だよ 何も心配ないからね」
「お医者さんのいうことをちゃんと聞くんだよ。」
と,語りかけ,病院をあとにする。
血圧は変化なし,酸素飽和度は若干下がっていたが,心拍数は110くらい。
今日も変化があったら連絡するといわれ,
こんな感じで,この先入院生活が続くのでは?と訝りつつ実家に戻る。
このとき,これが最後の面会になるとは思わなかった。