本人にはよくわからないであろうが,

父の一番の悩みは,食事がとれないことである。

 

食事がとれなければ,それはすなわち死に直結する。

点滴をしても,それを抜いてしまうかもしれない。

思えば,先日にMR検査で肺に白い影があったが,

それが原因しているのではないか…などと考えていると,

午後3時ころ,ホームから電話がかかってきた。

 

今,酸素マスクを使っているが,ホームでは一日5Lまでしか使えない。

入院すればそれ以上使えるようになるが,

おそらく身体拘束のようなこともされるのではないかと思う。

ホームではできる限りのことしかできない。

救急搬送して,入院する方が長く生きるられるのではないかと思うが,

ご家族の方はどうのように考えますか。

 

とても即答できる内容ではなかったので,しばし時間をもらって

こちらから折り返すことにした。

 

酸素マスクを自分で外してしまう父。

私も付きっきりで看ることができない現状がある。

よしんば家族で交代で付き添ったところで,

嫌がる本人をよそに,力尽くでマスクをさせることはできないではないか。

 

病院に入院すれば,命を長らえさせることはできるだろう。

しかし,身体拘束されることはやむを得ず,

管だらけにされて,ただ呼吸だけしているという父の姿を想像するほど辛いものはない。

 

今はホームが父の家なのである。

本人は職員さんの顔を覚えることもできないだろうが,住み慣れた家である。

父にぴったりの環境であろうと私が選んだホームである。

最期はやはり今のホームで過ごさせてやりたい。

 

そんな風に,考えがまとまったところで折り返しの電話を入れる。

 

 

事態は思いのほか切迫している…。