それでもしばしの間、私が耐えることができたのは、

ある番組に出会ったことが大きかったかもしれない。

 

それはほんの5分の番組だ。

介護のワンポイントアドバイスといったもので、

認知症に悩む多くの人々に向けて作られた番組である。

 

こういうときにはどのように対処すべきかという、具体的なアドバイスは、

頭で理解できたとしても、現実にはそうはいかない。

あくまでも努力目標である。

 

私を安心させたのは、同じような症状に悩まされている人間が、この世に大勢いるということ。

このような番組が流されるということが、雄弁に物語っている。



そして何よりも私を安心させたのは、最も正しいことは

最もよい施設に、認知症の親を収容することであるという内容に触れたときである。

 

親なのだから、子供が面倒を見るのは当たり前なのだという先入観は、

子供だけでなく、家族を不幸に陥れる。

 

映画「わが母の記」では、認知症になった母を、

家族や取り巻く人々が、大変な思いをしながら介護していく様子が表現されていた。

 

今は星の数ほどある介護施設が、多くの認知症の老人を支えている。

それだけではなく、その家族も支えてくれている。

 

感謝とともに、よい時代に生まれることができた幸運を、感じずにいられない。