父のカオスな言動に付き合いつつ、どうしても気になるのが仕事の話であった。
「注文書が届いたんだが、どこかにいってしまった。」
「今月分の売り上げをまとめなければならないんだが、伝票がない。」
「○○の件は、おまえが引き継いだんだよな。」
私は40年以上、塾講師一筋で生きているということを忘れてしまうのだ。
父の机の上には、会社の資料が山のようにある。
それらの資料の中から、父がどこかに電話をしてしまわないか。
もし、とんでもない発注でもしてしまって、誰かに迷惑をかけるようなことがあったら…。
心配の種は尽きないのであった。
実家に行くたびに、ファックスの送受信記録や、携帯電話の着信履歴を確認しながら、
変化が起きていないかどうかを確認する。
結果的には、トラブルは起きていなかたのは幸いであった。
仕事のことでわからないことがあると、父は必ず私に確認をしてきた。
「そういうことは、会社に聞いてくれ」といっても、父は決して会社には連絡を入れなかった。
おそらく自分の中でも、自分自身に確信が持てなかったのだろう。