真顔「赤木さん(仮名)のケアが終了しました。三ヶ月間、ありがとうございました。」と、サービス責任担当者さんから連絡ありました。
びっくり「赤木さん、元日の地震は大丈夫でしたか?」
真顔「正月は親戚の家にいたので彼女は無事でした。」
爆笑「良かった!」
真顔「汚部屋ですからね。今回、大阪も震度四で、けっこう長くも揺れましたよね。玄関ドアが、降ってきた荷物で塞がって、開かなかったんですって。」
ショボーン「あちゃー。あの家のドアは内開きですものね。玄関にも物を積み上げれるだけ積み上げてますから。」
真顔「業者に頼んでドアごと外してもらったそうですよ。そしたら、荷物がドサぁ!って玄関から溢れたそうです。」
ニコニコ「ほんまに、家におらんで良かった。怪我無くて何よりでした。」
真顔「彼女に週に3回もの買い物代行のケアは不要です。と、契約の当初から、◯◯ケアマネージャー(大手の介護事業所の人)に言うてたんです。けど、彼女は買い物のケア以外は不要とのことでした。なので、お断りしました。」
ニコニコ「彼女に本当に必要なケアは、私も買い物ではないと、思ってます。」
真顔「家を掃除することと、心のケア、の、ほうが大事やと思う。けどね。ケアマネージャーが、彼女の言いなりで、買い物のプランしかたてないから。」

赤木さんは七十代。一人暮らし。何処もかしこも床から天井まで荷物で溢れてる。
掃除機すらかけれんです。
真顔「買い物依存症でもありますよね。」
ニコニコ「不安、と、不満と、孤独が物を買うことに執着するのかなあ?」
真顔「社会的後見人さんをたてて、金銭管理をしてもらうこと、も、ケアマネージャーに提案してたんですけどね。」

赤木さんの玄関前で、ヘルパーは、まず、虫よけスプレーを全身にふりかけます。足の裏も必須です。

玄関は、ヘルパーが靴が脱げる三十センチ×三十センチ以外は、空間は無いです。
訪問を告げるチャイムをヘルパーが押してからドアを開ける迄、三分はかかります。ヘルパーは靴を脱いだら、天井からぶら下がってる傘やズボンや何やかやをかき分け、ダンボール箱や物をまたぎ、お腹をへっ込めて進む。二メートルほど奥へ行くと、本や雑誌やトイレットペーパーや水やスーパーの袋がわんさと天井迄積み上げられてる部屋のテーブルにたどり着くの。
トイレットペーパーの袋は埃が積もり、袋の中のトイレットペーパーは、茶色く変色してます。
全ての物がこんな感じで、古びてくすんでいます。

彼女は、小さなテーブルの前の小さなソファーで過ごしています。寝返りも打てない小さなソファーで、ごはんを食べ、そこで座ったまま寝ている。
ベットは奥の部屋にあるんだけど、荷物で溢れて辿り着けないらしい。どこがベットなのか、見てもわからないほど荷物に溢れてるの。

そのテーブルで、メモ書きとお金を預かり、買い物のケアに行くの。たいてい3件のスーパーを巡るのだけど。
各スーパーのチラシの値段通りに買わねばならない。売り切れや、その値段以上のときは、ヘルパーは電話して、買ってよいか否かを伺います。 
その品がその値段でない時はややこしい。そのスーパーの店員さんに電話をかわれと言うんよね。
真顔「何で置いてないの?」
お父さん「各店によっても仕入れ先が違いますので、当店では無いです。」
無いものは無いと、思えない赤木さん。
しゃあないやん、売ってへんねんから、と、言う思考にはならへんのです。
赤木さんのクレームに店員さんもうんざりしたお顔。その押し問答に、ヘルパーは、ただひたすら店員さんに謝ります。
値段の指定が、しんどかったです。
ヘルパーの買い物代行は、ご自宅から近くのスーパーで行うのです。
食料品だけ置いてるスーパーの場合は、トイレットペーパーなどの日用品をドラッグストアで買うこともありますが、それは、常識の範囲でお願いしたいです。

赤木さんの買い物は、想定外でした。
一回の買い物の量も多いです。
牛乳5本、水2リットルを3本は、しょっちゅう。重いよ。特売のスナック菓子は一度に八袋。特売の佃煮は5個まとめて買うんは彼女には当たり前。
特売になっていたとしても、そんないっぺんに食べられへんはず。やけども、彼女は買わずにおれない。週に3回、各社のヘルパーに買い物代行をさせるの。

食べれずパックのままに何年も積み上げて放置してる豆乳は、ブロックのように固まるの。うち、豆乳が固まるん、初めて知りました。
水のペットボトルも何年も置いてるけど飲めるんやろか?

洗面所も天井迄積み上げてる荷物で手も洗えない。お風呂は入れてるのかな?いつも同じ服やけど洗濯してるんかな?洗濯物はどこに干すの?
いや、それよりも
地震が来たら、危ないです。

私もサービス責任担当者も、毎回、ケアマネージャーに、ケア内容は、これで良いのかを問うてました。物を減らす提案をしてました。カウンセリングとかも提案しました。

でも彼女は、できなかったんよね。

赤木さん、身の安全が第一です。
真顔「今は、親戚の家にいてるそうですよ。でね、あの家をヘルパーに片付けろと。なので、断りました。無理です。介護保険の訪問ヘルパーの領域をこえてます。」

赤木さんが御親戚のおうちにいてはって良かったです。
あの家に戻るんは危ないです。

家は安らぎの場所です。物が降ってくる危険な場所であってはならんです。
これを機に古い賞味期限切れたものから処分してください。

もうお目にかかることは無いでしょうけと、赤木さん、お元気で。
と、お空見上げてつぶやきました。


んで、めっちゃいらん物を、捨てたくなりました。

古いタオルや服にさようなら。
ああ、スッキリした。