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日曜日の朝、ひらがなのたどたどしいラインが届きました。
「たすけてください、こまってます」
半年前にガラケーからスマホに変えたたつ子さんに、すぐさま電話しました。
「たつ子さん、おはようございます。どうされましたか?」
「冷蔵庫を買いに行きたいんや。着いてきてくれんかな?冷蔵庫からえらい音がするん。寿命かなぁ。」
亡き母と同じ年頃の八十代のたつ子さんは、前の会社の時にヘルパーとして訪問してました。道路向こうにお住まいです。
伺うと、冷蔵庫がグイーンと大きな音をさせてました。冷蔵庫も冷凍庫の中も殆ど食品が入ってなかったのは幸いです。念のため水漏れの予防にバスタオルを敷き、冷蔵庫のサイズを測って。さて、出かけましようか?
「息子が来た時にスマホ買いに梅田の電気屋に連れられて行ってな。それっきり、梅田にも出とらんし。」
「一人じゃよういかんし。」
「もう今は、私んちのヘルパーさんと違うのに、つき合わせてごめんね。」
電車の中でちょこんと座って不安を口にするたつ子さん。
小さな手です。丸まった背中に亡き母を重ね、愛おしくなりました。
「こちらこそ、退職して、ごめんなさい。」
「コロナで友達がおらんようになってしもうた。」
ヨガ、コーラス等、楽しんでたたつ子さんですが、コロナ禍で家に籠もった間に、お友達が次々にお亡くなりになったと、俯いて寂しそうに話します。
「息子は東京やし。あんた、つきあわせて、ごめんなさいね。」
「今日、私、お休みで良かったです。」
大きな電気屋さんに着きました。家電は4階。広い売場で冷蔵庫を探しました。どれにしようか。新製品は機能充実してて、どれもこれも素敵。
「ドアは左のやよね?」
「野菜やお茶が入れやすいんがええわ。」
「これにしたいわ。んっと、店員さんは、どこやろ?」
「このバーコードの付いた紙を持ってカウンターに行きましょ。」
「こちらにお座りください。在庫の確認してきます。」
ご希望の冷蔵庫はありました♪」
イケメン店員さんに促されるまま、住所や電話番号を記入。郵便番号、何やったっけ。その大型電気屋のカード番号を書くのも一苦労。文字が小さくて、書く欄も小さくて。老眼鏡かけながら一生懸命書くたつ子さん。
「冷蔵庫の代金と配達料金とで○○○円です。それとは別にリサイクル料として、うんちゃらかんちゃら。ごく、稀に別途料金がかかります。」
「別料金とは?」
立石に水のようにつらつらと説明する店員さん。
「ちょっと待ってくれる?もう一回ゆっくり云うてくれる?」
「あのですね!」いきなり大きな声で話す店員さん。
高齢者と接する機会が無いと、ゆっくりイコール大声になっちゃうのかな。
「この女性は、お耳は良いのよ、お声の大きさは普通で、ゆっくりと話してくださいな。」
私は大きめの字でメモを取りながら、それをたつ子さんにお見せしながら、店員さんと確認しました。
①冷蔵庫のお代金+配送料
ポイントで還元するから、まけられんと、言う店員さん。
「ポイントもらっても使いに来るんが大変やん。これが私の生涯の最後の冷蔵庫になるん。少しでも安くして。」
端数切ってもらいました♪
②古い冷蔵庫の引き取り代金
「これは、新しい冷蔵庫が届いた時に、運んでくれた人に、現金で、払ってね。」
「分かったよ。現金でおよそ五千円くらいやね。」
③配達の日時
○○日の何時から何時
来る前に電話があります。
さて、お支払い。
レジカウンターは混んでるから、十分後に行ってとは言いました。レジで呼び出しはしないので、時間を見計らって行ってくださいと。
「なら、その間にお手洗いに行きましょうか。」
レジカウンターでの男性も、つらつらつらつら、立石に水!
大型電気屋さんは徹底的に、確認作業を店員さんに教育してはるんだけど、マニュアルをそのまま話すその彼の言葉は、早すぎて、こちらが確認で頷くひまもないの。印字された紙を読み上げる彼の言葉は事務的。
促されるまま、カードを機械に差し込むたつ子さん。
「暗証番号を入れてください」
「何やったかなぁ。長いこと使ってへんからなぁ。」
「なら、今回は、サインでしましょう。ですが、これから先、サインではカードが使えなくなる可能性がありますので、暗証番号の再設定してください。」
「なら、今、再設定とか言うのしてくれん?」
「ここではできないです。スマホ操作でうんちゃらかんちゃら」
「なら、正月に息子が来た時にしてもらうわ。」
「はぁ、やっと買えた。やれやれ。時間掛かるもんやなぁ。」
「冷蔵庫一つ買うんも大変やった。」
「明日、ええの届きますよ。楽しみですね。」
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「これでええの?」
じゃ、、私に送ってみましようか?
ライン開けて、たつ子さん、がんばりました。
↑この写真、素敵です。
おいしいね。二人で食べるとなおおいしいね。
「休みの日にごめんね。」
「いいえ、休みで良かったです。ごちそう様でした。」
「忙しいやろうけど、いつでも来てね。」
「これからは、ヘルパーとしてではなく、お友だちとしてお付き合いくださいね。」
たつ子さん、楽しかったです。
亡き母としたかったことをさせてもらえました。ありがとうございます。
これからもずっとずっとお元気でいてくださいね。
ベランダから手を振って見送ってくれるお人がいてくれる。嬉しかったです。
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