新しい冷蔵庫が届いて、たつ子さん(仮名)は、にこにこしてます。
おばあちゃん「あんたのおかげや、一緒に行ってくれてありがとう。」
ニコニコ「いいえ、私は何にも。」
おばあちゃん「私一人やったらよう買わんかったわ。」
ニコニコ「ええの来て良かったです。」


 日曜日の朝、ひらがなのたどたどしいラインが届きました。

「たすけてください、こまってます」

半年前にガラケーからスマホに変えたたつ子さんに、すぐさま電話しました。

ニコニコ「たつ子さん、おはようございます。どうされましたか?」

おばあちゃん「冷蔵庫を買いに行きたいんや。着いてきてくれんかな?冷蔵庫からえらい音がするん。寿命かなぁ。」

亡き母と同じ年頃の八十代のたつ子さんは、前の会社の時にヘルパーとして訪問してました。道路向こうにお住まいです。


伺うと、冷蔵庫がグイーンと大きな音をさせてました。冷蔵庫も冷凍庫の中も殆ど食品が入ってなかったのは幸いです。念のため水漏れの予防にバスタオルを敷き、冷蔵庫のサイズを測って。さて、出かけましようか?


おばあちゃん「息子が来た時にスマホ買いに梅田の電気屋に連れられて行ってな。それっきり、梅田にも出とらんし。」

おばあちゃん「一人じゃよういかんし。」

おばあちゃん「もう今は、私んちのヘルパーさんと違うのに、つき合わせてごめんね。」

電車の中でちょこんと座って不安を口にするたつ子さん。

小さな手です。丸まった背中に亡き母を重ね、愛おしくなりました。

ニコニコ「こちらこそ、退職して、ごめんなさい。」


おばあちゃん「コロナで友達がおらんようになってしもうた。」

ヨガ、コーラス等、楽しんでたたつ子さんですが、コロナ禍で家に籠もった間に、お友達が次々にお亡くなりになったと、俯いて寂しそうに話します。

おばあちゃん「息子は東京やし。あんた、つきあわせて、ごめんなさいね。」

ニコニコ「今日、私、お休みで良かったです。」


大きな電気屋さんに着きました。家電は4階。広い売場で冷蔵庫を探しました。どれにしようか。新製品は機能充実してて、どれもこれも素敵。

ニコニコ「ドアは左のやよね?」

おばあちゃん「野菜やお茶が入れやすいんがええわ。」

おばあちゃん「これにしたいわ。んっと、店員さんは、どこやろ?」

ニコニコ「このバーコードの付いた紙を持ってカウンターに行きましょ。」


お父さん「こちらにお座りください。在庫の確認してきます。」

ご希望の冷蔵庫はありました♪」

イケメン店員さんに促されるまま、住所や電話番号を記入。郵便番号、何やったっけ。その大型電気屋のカード番号を書くのも一苦労。文字が小さくて、書く欄も小さくて。老眼鏡かけながら一生懸命書くたつ子さん。

お父さん「冷蔵庫の代金と配達料金とで○○○円です。それとは別にリサイクル料として、うんちゃらかんちゃら。ごく、稀に別途料金がかかります。」

おばあちゃん「別料金とは?」

立石に水のようにつらつらと説明する店員さん。

おばあちゃん「ちょっと待ってくれる?もう一回ゆっくり云うてくれる?」

お父さん「あのですね!」いきなり大きな声で話す店員さん。

高齢者と接する機会が無いと、ゆっくりイコール大声になっちゃうのかな。

ニコニコ「この女性は、お耳は良いのよ、お声の大きさは普通で、ゆっくりと話してくださいな。」

私は大きめの字でメモを取りながら、それをたつ子さんにお見せしながら、店員さんと確認しました。

①冷蔵庫のお代金+配送料 

ポイントで還元するから、まけられんと、言う店員さん。

おばあちゃん「ポイントもらっても使いに来るんが大変やん。これが私の生涯の最後の冷蔵庫になるん。少しでも安くして。」

端数切ってもらいました♪


②古い冷蔵庫の引き取り代金

ニコニコ「これは、新しい冷蔵庫が届いた時に、運んでくれた人に、現金で、払ってね。」

おばあちゃん「分かったよ。現金でおよそ五千円くらいやね。」


③配達の日時

○○日の何時から何時

来る前に電話があります。


さて、お支払い。

レジカウンターは混んでるから、十分後に行ってとお父さんは言いました。レジで呼び出しはしないので、時間を見計らって行ってくださいと。

ニコニコ「なら、その間にお手洗いに行きましょうか。」


レジカウンターでの男性も、つらつらつらつら、立石に水!

大型電気屋さんは徹底的に、確認作業を店員さんに教育してはるんだけど、マニュアルをそのまま話すその彼の言葉は、早すぎて、こちらが確認で頷くひまもないの。印字された紙を読み上げる彼の言葉は事務的。

促されるまま、カードを機械に差し込むたつ子さん。

真顔「暗証番号を入れてください」

おばあちゃん「何やったかなぁ。長いこと使ってへんからなぁ。」

真顔「なら、今回は、サインでしましょう。ですが、これから先、サインではカードが使えなくなる可能性がありますので、暗証番号の再設定してください。」

おばあちゃん「なら、今、再設定とか言うのしてくれん?」

真顔「ここではできないです。スマホ操作でうんちゃらかんちゃら」

おばあちゃん「なら、正月に息子が来た時にしてもらうわ。」


おばあちゃん「はぁ、やっと買えた。やれやれ。時間掛かるもんやなぁ。」

おばあちゃん「冷蔵庫一つ買うんも大変やった。」

ニコニコ「明日、ええの届きますよ。楽しみですね。」

梅田はどこも人、人、人。
遅いお昼はお蕎麦屋さんで。
ニコニコ「わあ~美味しそう。」

おばあちゃん「写真ってどう撮るん?」

ここ、カメラのマークを触って、
お蕎麦に向けて、はい、カシャ!

おばあちゃん「これでええの?」

じゃ、、私に送ってみましようか?

ライン開けて、たつ子さん、がんばりました。

↑この写真、素敵です。

おいしいね。二人で食べるとなおおいしいね。

おばあちゃん「休みの日にごめんね。」

ニコニコ「いいえ、休みで良かったです。ごちそう様でした。」

おばあちゃん「忙しいやろうけど、いつでも来てね。」

ニコニコ「これからは、ヘルパーとしてではなく、お友だちとしてお付き合いくださいね。」


たつ子さん、楽しかったです。

亡き母としたかったことをさせてもらえました。ありがとうございます。

これからもずっとずっとお元気でいてくださいね。

ベランダから手を振って見送ってくれるお人がいてくれる。嬉しかったです。


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