その日寺田さん(仮名)のおうちで作ったのは鶏肉と卵の雑炊。

薄味にしてますので、お昆布としじみの佃煮を乗せて食べてくださいね。」

 

「なぁ、まだ佃煮は残ってるんか?」

「はい、お昆布はあと少しですよ。しじみの佃煮はまだたくさんあります。少しずつ少しずつ食べてくださいね。」

 「わし、どんだけ、娘に怒られたことか。」

「娘さんは、怒ってなんかいませんよ。心配しはっただけですよ。」

 

↑一袋500gも入ってる佃煮。A4のノートサイズって言うた方がわかりやすいかしら?

製造者は大阪府の南のほうの住所。個人名が書かれてました。

 

昆布一袋、しじみ一袋で 計1キロ。

スーパーで売られている一般的な佃煮が約100g以下ですから、マジで大量です。

 

「もったいないですし、小分けして冷凍してます。お料理にも使って無駄なくいただきましょうね。」

 

それは2ヶ月前でした。

小さな冷蔵庫を占領するように、↑のしじみの佃煮と昆布のの佃煮が入ってました。

訪問販売のおじさんから買ったと言うのです。

 

その日は新しいガス給湯器の取り付けの日。

業者さんが来る時間近くになったので、寺田さんは、玄関の鍵を開けました。

80代の寺田さんは、脳梗塞の後遺症があります。うちの中でも杖をついている寺田さんは、寝室から仏間、リビング、を抜けて玄関まで行くのも時間かかります。ヘルパーの訪問などの時間になると、前もって鍵を開けてくれてるのです。

 

その日、玄関の鍵を開けたとたんでした。チャイムも鳴らさず、その男性は玄関に入ってきたそうです。

「久しぶりやな」

???

寺田さんには、見覚えのない、知らない人やったそうですが、奥様を亡くしてから、町内のみなさんが良くしてくれるので、町内の人やと 思ってしまいました。

 

「これ、食べてみ。」と男性に出された佃煮。

一口食べた途端、「おいしいやろ?」と男性が言うので、「おいしい」と答えたそうです。

100g 380円と言われ、2袋で3800円をお支払いしたそうです。

「わし一人やし、これは多いなぁ。」

「な、ことない。うちのはおいしいから、こんなんあっと言う間に無くなるでえ。」

と言われ、2袋、計1キロもの佃煮が寺田さんの冷蔵庫にどーん。

 

娘さんは、怪しい宗教が売りつけにきたのでは?と、とても心配されました。

「お父さん、変なこと聞かれて無いよね?先祖の供養せなあかん、とか、この病気は先祖が祟ってる、とか、占いしたるとかいわれてへんやろね!?」

「もうお父さん!しっかりしてよ。まさか、ボケたんちゃうよね?」

 「娘がえらそうに言うから、かなわんかったわ。佃煮を持って帰れと言うたんやけどイランって。」

娘さんは、そんなムカつく物は持って帰るの嫌やというて喧嘩になったそうです。娘さんのお気持ちもわかります。

ご近所さんにお裾分けしようとしたら、お隣やお向かいの高齢者さんも買わされたようです。ご近所でも、大量の佃煮を巡り 親子喧嘩勃発です。

(寺田さんの隣の大奥さんからこの話は伺いました。断りきれずに佃煮を買っちゃったことで 次男さんの嫁さんから、めっちゃ叱られたそうです。)

 

結局、大量の佃煮が寺田家に残ったので、ヘルパーの私が小分けして冷凍庫へ入れました。

 

おいしく使いきりましようね。

お好み焼きにも混ぜてます。

パスタの上にも乗せてます。お雑炊にも、卵焼きにも、煮物にも、ごはんのお供にも。

あと少しで、佃煮は消費できます。

 

ややこしい人からトラブルを避けたいと、娘さんは考えて、ケアマネジャーと相談したそうです。結果、玄関の横のメーターボックスにキーボックスを取り付けることとなりました。

 

 

 

顔馴染みのご近所さんやヘルパーはお勝手から入ることになりました。

 

訪問販売のその人に言いたいです。

ネットで調べたら、NTTの某サイトであなたの名前が出てました。19件もの書き込みがありました。どれも寺田さんのケースと良く似てます。

高齢の方が買わされてるようですね。断りにくくて老齢の親が買ってしまった、返品しようと電話したら、怖かったとの書き込みもありました。

やや甘口の佃煮ですね。おいしいとの書き込みもありましたよ。

押し売りのような訪問販売をやめてネットで販売されてはいかがですか?ご自身の味のファンをネットで増やしてはいかがですか?

一生懸命に作ったなら、笑顔で買ってもらって、おいしく食べてもらわなくっちゃ、ね。

突然の訪問販売で、高齢のご利用者様が困惑することはやめてほしいです。

 

「さて、寺田さん。戸締まりは確認しています。今日は看護師さんが夕方来ます。けど、勝手口から入りますので。玄関から来る人は今日はいませんのでチャイムがなっても出ないでくださいね。」

「わかった。気をつけるなぁ。」

「明後日の朝は、デイサービスです。私がお手伝いに来ますね。お玄関前に車がきます。だからお玄関からお出かけしましょうね。」

「はい、了解です。朝早くから、すまんなぁ。寒くなったから風邪ひきなや。」

と言うてくれる寺田さん。

 

こんな優しいお人に押し売りせんといてくださいね。お願いします。