CREST研究員だった時は,直属の上司は研究所の所長の田島俊樹先生だった.田島先生はレーザー加速器の世界的な権威で,Tajima Dowson効果の発明でノーベル賞級と言われている研究者だ.
レーザー駆動の粒子線治療って,未知の分野だったが少し論文を読めば,治療に不必要な中性子線とかγ線,電子線が大量に同時発生することが解る.それで,直接の照射は無理難題で,マグネットのフィルターによって遮蔽と陽子線の選別が必要だと思って田島先生に報告に行ったら,滅茶苦茶怒鳴られたね〜議論にさえならなかった.
そもそも,レーザー駆動の粒子線治療のメリットというのが,小型化出来て,通常必要なガントリー等の大型の装置が要らなくなるっていうのが売りだったから,陽子線選別用のマグネットなんて大がかりな装置は到底許容できないって理屈では解るけど,無理なものは無理なんだよ.
ノーベル賞級の学者って聞いてたから,普通に議論モードになると思ってたけど,議論にさえならなかったから,この件依頼,田島先生とは全く議論しなくなった.議論しても無駄な相手に議論しても意味がない.怒鳴られるだけだし.
あとは,淡々と事務的に報告するだけって日々だったね.
ちなみに,最近の原子力系の教科書では,レーザー駆動の粒子線治療の説明では選別用のマグネットが載っていますけどね.それを最初に提案したのは私です.怒鳴られ損にならなくて良かった(笑)