もう高専教員じゃないから、書けるが、高専生って能力に見合った社会的な評価をされていないと常々思っていた。
とにかく給与が安い。学歴的には短大卒と同じだから、短大卒と同じ給与になる。
優秀な高専卒の人って、国立大工学部卒に余裕で勝ってしまうことが多いから、就職してから給与面で不満を持つ教え子も多かった。最近は、高専卒に大卒の給与を与える企業も増えては来たが、まだまだ少数だ。
余談だが、自分の教え子は、京大卒の学歴マウントがうざすぎて、企業内の試験でその京大卒に勝ったそうだ。
また、もっと勉強したくて大学院に進学しても、学歴ロンダリングとか、意味が分からない誹謗中傷を受けることも多い。
自分が学生だったときに、高専編入組が来たが、とにかく優秀過ぎて、勉強で結構お世話になったよ。
ある意味、高専生が学問で優秀なのは、大学受験というシステムが、偏差値が高い層では、殆ど意味がないということを示していると思う。
実際、高校数学ってかなり易しい。全体の平均に合わしてるからね。自分は高校時代は、興味がある本ばかり読んでいて、受験勉強は全くしてなかったが、共通一次試験は、数学は余裕で満点で、全体で9割は取れた。けれど、全然嬉しくはない。自分ははやく本格的な数学がやりたかった。しかし親にバレて滅茶苦茶怒られた。
高専生って、1年次から、かなり専門的な勉強をする。優秀な子はこの方が伸びると思う。
1年次の電磁気学の授業で、誘電率の説明をしている時に、コンデンサーにアルミニウムを入れたら誘電率はどうなりますか?って聞かれて、即答出来なかった。
後で調べて、ちゃんと次の授業では分かりやすく解答したが、高校の先生だと失礼だが答えられないと思う。
自分は、5年次の電磁気学の授業では、直感的にではあるが、導波管のモード理論も教えていた。これはもう大学院の内容だが、エンジニアとして概念だけでも理解していて欲しいから、かなり授業内容を考えて、数学的な要素を排除し、直感的に理解できるように組み立てた。
こういう事を理解しているからだし、実験がとにかく実践的で、エンジニアとしては本当に即戦力になると思う。
ただ、こういう事を言うと今までで一番成功した教育機関は高専だっていう馬鹿なジャーナリストが出てくるから、本当に勘弁して欲しい。大学の工学部が物凄く情けないんだよ。自分の出身大学を悪く言いたくはないが、教授陣の考えたカリキュラムは矛盾だらけだったし、大学の工学部って、名著で独学したほうが理解が捗るっていうかなり情けない状況なんだよ。30年前からね。
高専生の給与が安く、社会的に評価が低いのは本当に、日本社会が抱える一種の学歴信奉主義なんだなって思うよ。