レトロショップ成穂堂ケンの苦悩と爆笑の日々 -454ページ目

若きあなたに

長男がバイトを始めた。

勤め先は、サラリーマン時代の僕の古巣である。

長男がよもや自分がかつて籍をおいた会社に

お世話になるなんて夢にも思わなかった。

これも現役で頑張っている後輩のお陰である。
(いやあ、思いっ切りコネだ)

大学の方もプレスクールとかいって、

すでに英語の授業が始まっており、

それが3月半ばまで行われるらしい。

本人はバイトがわりに、

うちの店の手伝いをしたいようだが、

少しは世間にもまれる方がよいと思う。

勿論、新刊屋でのバイトが休みの日には、

うちの店を手伝う事になる。

長男にとっては、高校を卒業したと同時に

天地をひっくり返したような急激な変化だろう。

しかし、親の心配をよそに、

当の本人は、流れるままに身を任せているという感じで、

あまりあれこれ神経を使っているようでもない。




「何だかねえ、すんなり決まりすぎよね。大学もバイトも」

と、頬杖をつきながら家内が言う。

「不思議だねえ」

「私なんて、どこに履歴書を出したって通らないわよ、きっと」

「んっ、何が?」

「バイト」

「なぜ?」

「年齢よ、年齢。若い子が断然有利なの」

「どうして?」

「そりゃあ、年をくうと、どん臭くなっているし、映えないでしょ」

「少し子育てが落ち着いたかなというご婦人のほうがいいでしょ。

苦楽を知り、頑張り屋さんも多いだろうし」

「一般的に、雇用側はそうは思わないのよ」と、家内が嘆くように言った。

「ふ~ん」と僕は言った。

「・・・」

「あのさあ、今更どこかに履歴書を送る訳でもないでしょ」

「それはそうだけど、知り合いが働き口がないって言ってたから」

「じゃあ、自分で仕事をつくれば」

「うまく行く事なんてそうそうないでしょ」

「うまくいくまでやれば」

「簡単に言うわねえ」

「やる気があるかないかが一番大事でしょ」

「やる気があればうまくいく?」

「諦めなければ、うまくいくしかない」

「あなたと話していると、何が正しくて何が間違っているのか分からなくなるのよね」

「でもさあ、そうだと思わない?途中で投げ出すから、失敗だと思う訳でしょ」

そんな取り止めのないやり取りをする僕と家内であった。


何を持って成功というかは分からないが、

それは人各々が掲げた理念であり生き方なのだろう。

今、長男は細い細い苗を植え、恐々水をやり始めた。

そうしながらでも、木は育つ。

時間がかかってもいいから、大地に根を張った芯の強い木になれ。





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