レトロショップ成穂堂ケンの苦悩と爆笑の日々 -349ページ目

芸は身を助く

事件は春うららかな昼下がりに起きた。

今こうしてブログを書いているのは奇跡かも知れない。



道路から店の入り口までの数歩、僅かに坂になっている。

多くの店舗が雨水が流れ込まないように、

歩道より一段高い所に入り口を作るのと同じだ。

その入り口を入ってすぐの所に、すのこ状の敷板の上に机を置いていた。

いやいやこんな所で勉強はしない。

商品である。

この敷板を少し出口側に出したくて

板と板の間に手をつっこんで引きずろうとした。

面倒だったので机を乗せたまま引いてみたが、びくりともしない。

そんなに重いか?と思いながら今度は力任せに引っ張った。

腰をしっかり落として綱引きをするような格好だ。

と、予期しないことが起こった。

手を引っ掛けていた板が勢いよくベキッとはがれた。

あとはご想像の通り。

僕は板切れを持ったまま、見事に後転した。

勢いがある上に若干の坂だ。

一回転に止まらず、二回転目に入ると

体は完全に道路に飛び出してしまう。

この道路は結構車が行き交う。

ほんの数秒の間に僕の頭はフル回転した。

すべてのものが、びっくりするくらいスローモーションにみえる。

尻もちをつき、背中が地面につき、さらに体が回転しようとしたところで

僕は瞬間的に板切れを放り出し、両手を肩近くに置き、体を跳ね上げた。

所謂、後方倒立だ。ゆっくりと足を着き見事着地。

その直後、僕の背中をクラクションを鳴らしながら車が通り過ぎた。

車はそのまま走り去って行ったが、

きっとゼイゼイ言っていたのではないかと思う。

マンガのような話だ。

実は高校時代、僕は剣道部ではなく体操部にいた。

あの時の気を失いそうな練習が我が身を助けたのはこれで3度目だ。


まわりを見渡すと、近所のおばあちゃんが

ゆっくりした歩でこちらに向かっていた。

僕は何事もなかったかのようにおばあちゃんに挨拶をした。

おばあちゃんも「ごきげんさん」と言って、にっこり笑った。

少し気が落ち着くと、腰骨と後頭部に痛みを感じた。

肩を動かすと左の肩甲骨が痛い。

まあ、ちょっとした打撲だろう。

しかし驚いた。まさか板が外れるなんて思ってもみなかった。

敷板を見ると、頼りなさそうな釘が三本飛び出していた。

木ネジだったら、こんな事にはなっていなかったろうに。

それ以前にまず机をどけろよ、という話やね。

あそこで体が止まっていなかったら、確実に車に轢かれていたよな。

想像するとゾッとする。

皆さん、横着はいけません。

今回は横着をするとろくな事にはならないというご報告です。


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