成穂堂、焦る!
小正月も明けようとする日の事。
僕は、サンドイッチを頬張りながら、PCで映画を観ていた。
映画の中を救急車が走る。
サイレンはどんどん大きくなり、すぐ近くで鳴り止んだように聞こえる。
「最近取り付けたスピーカーの性能はすごいな」と、家内に言ったら
「サイレンは外から聞こえた」と。
直後に消防車のサイレンが追い掛けて来た。
そして、店の前あたりで鳴り止んだ。
僕と家内は顔を見合わせ、急ぎ外の様子を見に行った。
お向かいさんの塀づたいに救急車と消防車が止まり、
隊員が門の内へと走り込んで行った。
門前にはタンカを用意している隊員がいる。
静かな住宅地に戦慄が走った。
言うてる場合か!
えらいこっちゃ。おばあちゃんだ。
年末以来、姿を見ないと思っていた。
迂闊だった。独り暮らしなのに、顔を出しておくべきだった。
瞬時に様々な事が頭をよぎった。
「○△さんを呼びに行ってきて。僕は、中の様子を見に行く」と、家内に言った。
○△さんはおばあちゃんの親戚筋に当たる。
消防隊員の一人が、マイク越しに
「お騒がせしております。火事ではありません。救助活動にご協力下さい」
と言って、交通整理を始めた。
どうしようかと思っていた所に、家内が○△さんを連れて戻ってきた。
○△さんは、アワアワと動揺している。
僕は、○△さんと一緒に門前に近づき「親戚のものです」と、言った。
隊員の一人が「どうぞ」と通してくれた。(案外、簡単に入れてもらえるものだ)
玄関に入ると、奥の方から隊員らしき男性の声が聞こえる。
○△さんが、慌てた声で「親戚のものです。上がってもよろしいか?」と、言った。
すぐに「上がっておくなはれ」と、女性の声がした。
「んっ?」聞き覚えのある声だ。
声がして間もなく、奥の間から困ったような顔をしたおばあちゃんが出てきた。
僕と○△さんは「えっ!おばあちゃん。ええっ!」と、同時に言った。
じゃあ、誰の具合が悪い?たまたま、遊びに来ているお客が倒れたとか?
おばあちゃんは、手に持ったコードレスの緊急コールボタンを見せながら
「これ、間違ごうて押してしもうたみたいやわ。
テレビを観とったら、救急車と消防車が家の前に止まったのが分かってな。
成穂堂はんとこや。火事か?えらいこっちゃ。
と、玄関に向かおうとしたら、こんな事になってましてん」と。
間もなく、救急隊員も消防隊員も、「誤報で良かった。安心しました」
と、どこへやら連絡を入れ、引き上げて行った。
店に戻ろうとしたら、今度は新米らしき警官がやって来た。
そして、「救急隊から連絡を受けました。一応、事件性がないか確かめに来ました」と、生真面目に言った。
「誤報ですわ。すんません」と、僕は言った。
「あなたは?」
ややこしいな・・・
僕が、口を開こうとしたら、後ろからおばあちゃんが
「お向かいのご主人でんねん。すんませんな、私がいつの間にやら、膝でこのボタンを押してしもうたみたいですねん」と。
新米警官はにっこりして「おばあちゃん、何事もなくてよかったね。息子さんも良かったですね」と。
・・・いやいや、「お向かいのご主人」と言うてますやん。
では店に戻るかと思ったら、また大柄なオヤジ警官が一人やって来た。
で、新米警官と何やらやり取りを交わし、僕に近づき「何もなくて良かったですわ」と。
新米警官とおばあちゃんが何やら話をしている間にオヤジ警官が小声で僕に言った。
「息子さん、おばあちゃんに何もなくて良かったですな。しかし、ごっついお住まいでんな。玄関先で住めますな」
僕は、説明をするのが面倒臭くなり、「そうですね」と、小さく笑った。オヤジ警官は続けた。
「お向かいにお店を持っていて良かったですな。何かあっても近こうて安心ですな」
「いや、あのね」
「まあしかし、何事もなく良かったですわ」と、一人合点している。
いやいや、おいらは息子じゃない。どうやればそんなおかしな伝わり方をするのか。
第一、こんな贅沢な造りの家の息子が、今にも朽ち果てそうな倉庫を店にしているのは不自然だろ。
古きよきものと朽ち果てそうなものは、全く別物なのだ。
まっ、おばあちゃんも何を咎められる訳でもなく良かった。
何もなくぼぅ~と出来る日はないけど、まあ平和といえば平和な町だ。
住まう人々ものんびりしているし、公務の方々もあまりピリピリしていない。
その後、数日に一度は僕か家内がおばあちゃんの顔を見に行っているが、
おばあちゃんは、カラオケだの食事会だの新しく出来たスーパーに買い物に行って来るだの、バタバタした日々を過ごしてらっしゃる。
おばあちゃんには、色々と気持ちの持ち方を教わる事が多い。
色々とアドバイスを下さる。
僕に出来ることは何もないかも知れないけど、
おばあちゃん、いつまでも元気でいて下さいと願う。
僕は、サンドイッチを頬張りながら、PCで映画を観ていた。
映画の中を救急車が走る。
サイレンはどんどん大きくなり、すぐ近くで鳴り止んだように聞こえる。
「最近取り付けたスピーカーの性能はすごいな」と、家内に言ったら
「サイレンは外から聞こえた」と。
直後に消防車のサイレンが追い掛けて来た。
そして、店の前あたりで鳴り止んだ。
僕と家内は顔を見合わせ、急ぎ外の様子を見に行った。
お向かいさんの塀づたいに救急車と消防車が止まり、
隊員が門の内へと走り込んで行った。
門前にはタンカを用意している隊員がいる。
静かな住宅地に戦慄が走った。
言うてる場合か!
えらいこっちゃ。おばあちゃんだ。
年末以来、姿を見ないと思っていた。
迂闊だった。独り暮らしなのに、顔を出しておくべきだった。
瞬時に様々な事が頭をよぎった。
「○△さんを呼びに行ってきて。僕は、中の様子を見に行く」と、家内に言った。
○△さんはおばあちゃんの親戚筋に当たる。
消防隊員の一人が、マイク越しに
「お騒がせしております。火事ではありません。救助活動にご協力下さい」
と言って、交通整理を始めた。
どうしようかと思っていた所に、家内が○△さんを連れて戻ってきた。
○△さんは、アワアワと動揺している。
僕は、○△さんと一緒に門前に近づき「親戚のものです」と、言った。
隊員の一人が「どうぞ」と通してくれた。(案外、簡単に入れてもらえるものだ)
玄関に入ると、奥の方から隊員らしき男性の声が聞こえる。
○△さんが、慌てた声で「親戚のものです。上がってもよろしいか?」と、言った。
すぐに「上がっておくなはれ」と、女性の声がした。
「んっ?」聞き覚えのある声だ。
声がして間もなく、奥の間から困ったような顔をしたおばあちゃんが出てきた。
僕と○△さんは「えっ!おばあちゃん。ええっ!」と、同時に言った。
じゃあ、誰の具合が悪い?たまたま、遊びに来ているお客が倒れたとか?
おばあちゃんは、手に持ったコードレスの緊急コールボタンを見せながら
「これ、間違ごうて押してしもうたみたいやわ。
テレビを観とったら、救急車と消防車が家の前に止まったのが分かってな。
成穂堂はんとこや。火事か?えらいこっちゃ。
と、玄関に向かおうとしたら、こんな事になってましてん」と。
間もなく、救急隊員も消防隊員も、「誤報で良かった。安心しました」
と、どこへやら連絡を入れ、引き上げて行った。
店に戻ろうとしたら、今度は新米らしき警官がやって来た。
そして、「救急隊から連絡を受けました。一応、事件性がないか確かめに来ました」と、生真面目に言った。
「誤報ですわ。すんません」と、僕は言った。
「あなたは?」
ややこしいな・・・
僕が、口を開こうとしたら、後ろからおばあちゃんが
「お向かいのご主人でんねん。すんませんな、私がいつの間にやら、膝でこのボタンを押してしもうたみたいですねん」と。
新米警官はにっこりして「おばあちゃん、何事もなくてよかったね。息子さんも良かったですね」と。
・・・いやいや、「お向かいのご主人」と言うてますやん。
では店に戻るかと思ったら、また大柄なオヤジ警官が一人やって来た。
で、新米警官と何やらやり取りを交わし、僕に近づき「何もなくて良かったですわ」と。
新米警官とおばあちゃんが何やら話をしている間にオヤジ警官が小声で僕に言った。
「息子さん、おばあちゃんに何もなくて良かったですな。しかし、ごっついお住まいでんな。玄関先で住めますな」
僕は、説明をするのが面倒臭くなり、「そうですね」と、小さく笑った。オヤジ警官は続けた。
「お向かいにお店を持っていて良かったですな。何かあっても近こうて安心ですな」
「いや、あのね」
「まあしかし、何事もなく良かったですわ」と、一人合点している。
いやいや、おいらは息子じゃない。どうやればそんなおかしな伝わり方をするのか。
第一、こんな贅沢な造りの家の息子が、今にも朽ち果てそうな倉庫を店にしているのは不自然だろ。
古きよきものと朽ち果てそうなものは、全く別物なのだ。
まっ、おばあちゃんも何を咎められる訳でもなく良かった。
何もなくぼぅ~と出来る日はないけど、まあ平和といえば平和な町だ。
住まう人々ものんびりしているし、公務の方々もあまりピリピリしていない。
その後、数日に一度は僕か家内がおばあちゃんの顔を見に行っているが、
おばあちゃんは、カラオケだの食事会だの新しく出来たスーパーに買い物に行って来るだの、バタバタした日々を過ごしてらっしゃる。
おばあちゃんには、色々と気持ちの持ち方を教わる事が多い。
色々とアドバイスを下さる。
僕に出来ることは何もないかも知れないけど、
おばあちゃん、いつまでも元気でいて下さいと願う。