雪に咲く花 | レトロショップ成穂堂ケンの苦悩と爆笑の日々

雪に咲く花

自宅から店には、抜け道を通って行く。

住宅地をくねくねと縫うように車を走らせるのだが、

先日、ハッとするような花に出くわした。

あたり一面真っ白になるほど降る雪の中、

僕には唯一その真紅の花だけが、色彩を持ってるように見えた。

今の今まで気が付かなかったが、

多分、毎年そこに咲いていたのだろう。

特に植物に興味を持った事はないので、

それが何の花なのか知らない。

お向かいのおばあちゃんに、その花の様子を話すと

「あんたそれはな、さほど背が高なかったら寒椿や。高かったら山茶花や」と。

「こんな寒く厳しい季節に咲く花もあるのですね」と、言うと

「ぬるま湯だけやったら、花は咲かんと言うこっちゃな」

と、おばちゃんは入れ歯をカタカタ言わせながら笑った。

時おり、年輩の方の言葉にはハッとさせられる。

彼らが、この時期に花を咲かせるというのは、

何かしら種を守る為の戦略なのだろうが、

人の目にはそうは映らない。

少なくとも僕の目には、理屈ではなく、ただひたむきに生きる命のように映る。

そして、凛として美しい。

その花を思い浮かべると、己の不甲斐なさにしばし言葉を失う。

ふと鏡を見ると、そこには出来ない言い訳を器用に探しだす自分がいる。

良いも悪いも、僕は今ここにこうして生きている。

小理屈なぞどうでもよいから、ただひたむきに生きよ。

寒椿であろうその花は、僕にそう語り掛けている。