まだ見ぬあなたへ | レトロショップ成穂堂ケンの苦悩と爆笑の日々

まだ見ぬあなたへ

「ちょっと、あんた頑張りや。わてはこの店でしか買わんけんどな」

この所、立て続けにご近所さんにそう励まされている。

何の事かと思ったら、

店の近くを走る幹線道路にリユースショップが出来たという。

携帯ショップと同じ敷地内に派手な看板が掛かっているらしい。

みんな思いついたまんまを口に出すので、どうも要領を得ない。

どうやらその店はバッグ専門店の退店跡に出来たようだ。

自分の店の事はさておいて、

なんと中途半端な床面積で営業をするのだろうと、腕組みをしてしまう。

恐らく、金プラチナブランド品高価買取り、なんて店ではないのかと。

取り敢えず、100均ショップに行くついでに、その店の前を通ってみる事にした。

確かに看板もさることながら、

店の壁面全部が派手なウォールステッカー(というのだろうか?)で被い尽くされていた。

案の定、内容は金プラチナ・・・というものだった。

更には家電、電気工具、古美術品も買いますというコピーもあった。

僕はニンマリして「頑張れよ~」と呟いて、そこを立ち去った。

背中越しに「おまえもな~」と言われ、僕はびっくりして自転車をとめた。

振り返ってみたが、そこには誰もいない。

幟がバタバタと風に煽られていただけだ。「ババエモバ~」って。

僕は背筋を伸ばし「頑張りまっせ」と、言った。

返事はなかった。

常日頃から自店を含め、何かしらの店に入る度に、

その店には人を感動させる何があるのだろう?と、思う。

いくら商売に疎い僕でも、利潤の事は考える。

だからといって、売れそうなものは何でも扱うというような事はしない。


いやいや、先の店への当てつけではない。

僕は思い入れも何もないような店づくりはしない。・・・そう思っている。

流れに抗うことができず、思いとは違う方向に向かってしまう時もあるが、

どこかで原点に戻ってはやり直すという作業をしてきたつもりだ。

例えばモノをつくる人、文筆を生業とする人、それを商品化する人、商品を売る人など、様々な人達がいるが、

みんな自分が体験した感動や思いを、

一人でも多くの人に分けたくて動くのじゃないだろうか。

確かに、時の流れと共に扱う品々は変わっていく。

だけど、人の笑顔をみたいという気持ちは変わらない。

自他共に笑顔であれ。

人の悲しみ、苦しみを癒す事は僕には出来ないが、

あなたに笑顔で接する店にする事はできる。

多くの場合、人は感情で動くものだ。

人の真心や感動がない場所に人は集まらない。

うちの店は通りすがりに立ち寄れるような好立地ではない。

わざわざ、足を運ばなくてはならないような辺鄙な場所にある。

だけど、わざわざ出向いて来て頂く価値のある店にしていこうと、日々頑張っている。

まだ見ぬ、あなたのために。