商売人として思うこと | レトロショップ成穂堂ケンの苦悩と爆笑の日々

商売人として思うこと

「少し古道具屋ぽい感じになってきたな」

と、店のなかほどから師匠の声がした。

「あれっ、師匠。ご無沙汰です。もう引越しは終わったのですか?」

師匠は事務所のほうに足を運びながら

「終わるかいな。やっと庭石の据け替えが終わったところやがな」

と、言った。

「まあのんびりやってくださいな」と、僕は笑った。

「どや、売れてるか?」と、師匠。

「少しは。でも、こんな貧弱な品揃えではあきませんわ」

「そんな急に集まるかいな。辛抱して頑張り」

僕は師匠にお茶を勧めながら言った。

「僕のやってることは、花が咲くんですかねぇ?

何か、孤島に店を出してるんやろかと、思う時がありますわ」

師匠は僕の目を覗き込むように言った。

「どんな花でも時が来ると咲くんや。

咲かんのは育てるのを諦めた時だけや」



きっと僕は、まだ土作りを始めたばかりなのだろう。

花が咲く咲かない以前の問題だよな。



「メモとペン、持ってきて」と、師匠が言った。

そしてある店の名と地図を書いて、

「一度、行っといで。週の半分しか開いてないから、問い合わせてから行きや」と。

それは隣の市にある店だった。


もしこの店のファンだという方がお読みになっていたら申し訳ない。

これはあくまでも私的グダラグダラ日記ということで、お許しくだされ。

さて、数日前の事だ。

僕は師匠のメモから電話番号を探し、

営業時間を問い合わせることにした。

電話の呼び出し音がなり受話器の向こうから

「はい」と、しわがれた声がした。

一瞬間違えたかと思ったが

「○○ショップさんですか」と、聞いてみた。

「なにか?」と。

店とは思えんなと思いながらも

「今日、そちらは開いていますか?」

「いつも通り」と、ぶっきらぼうな返事があった。

「初めて伺うので分からないんです」

と、僕はぐっと堪えて言った。

「開いてますよ」とだけ言って、電話は一方的に切れた。

これだけ無愛想と言うか、傲慢さを感じる店もそうそうない。

腹立たしさよりも驚きの方が先にたった。

普通ならこの時点で行く気は失せるが、

師匠に行ってみるように言われている。

取り合えず、僕はその店に向かった。

店の所在はすぐに分かった。

広い店内は夥しい数の骨董品、古道具が並べられていた。

いや、並べてあるというより押し込まれているという感じだ。

そして、お客もガヤガヤと行き交い、

ひっきりなしにレジが鳴っている。

このご時世にも関わらず、随分繁昌しているようだ。

僕は時間をかけて店内を見て回った。

興味のある商品があちこちにあるが、

どれもこれもデタラメに高い。

そして、曜日によって違うようだが、目を引くような値引き率を謳っている。

僕が見る限り、値札は一番値引率の高い日にあわせて計算されているようだ。

少し聞きたい事があったのだが、

スタッフは特にエプロンや名札をしている訳ではないので

一般客と見分けがつかない。

多分この人はスタッフだろうと思われる方に声を掛けたら、

スマホを操作しながら「はい?」と振り返られた。

「すみません。スタッフの方と間違えました」と言うと、

「ここの者ですよ。何か?」と。

「あ~、もういいですわ」と、僕は言った。

どうもお客の多くは常連さんのようで、

僕のようないちげん客を相手にするのは面倒なようだ。

この店がどういう経緯を辿って今日に至ったのかは知らない。

商売というのは、何を売るにしても

モノを売っているのではない。

モノを通して、お客に心の充足感を提供しているのだ。

その対価が売上となる。

僕はそう思う。

人の驕りとは恐いものだ。

時折、師匠はこういったかたちで、

大切な事を再認識させてくださる。

グズグズ言っている暇があるのなら、

諦めることなく考え動けという事だな。

「商い」とは「飽きない」事だとはよくいったものだ。