成穂堂、店づくりを考える | レトロショップ成穂堂ケンの苦悩と爆笑の日々

成穂堂、店づくりを考える

「諸君はライフサイクルという言葉を知っていますか?」

と、年老いた先生は僕たちを見回して言った。

暫く沈黙があり

「人の誕生から死までの過程のようなものだと思います」

と、誰かが言った。

「なるほど。それは企業にも当てはまるものなのです」と、先生は言った。



「例えばですよ、新聞の株式欄に載っている会社。

それらが、100年前に何社あったと思いますかな?

また、100年後も同じようにあると思いますかな?」



「ライフサイクルについて」というのが、

マーケティングの授業初日の内容だった。

先生は「会社にも寿命があります。商品も同様です」と、言った。

僕は思いもしないその言葉に、

「店にも寿命があるのですか?」

と、思わず口に出してしまった。

「勿論。種が生き延びるには、

環境に適応していく必要があります。

子を成し世代交代を行う訳ですな。

その過程で、様々な『思い』が次世代に伝達されます。

それを我々は進化と呼びます。店とて同じ事です。

うまくいかなければ死滅します」

マーケティングという言葉さえ初めて耳にする学生成穂堂は、

不思議な世界を垣間見たような気がした。

あのデパートやスーパーが潰れるはずないだろうと、その時は思ったが・・・

授業が進むに連れ、この先生の話が興味深いものになってきた。

昨日の事のように書いているが、数十年前のひとこまである。

勿論、正確な問答ではなく、

覚えている言葉の欠片を繋ぎあわせた。


それ以来、僕は物事を見るときに、

どこかしらライフサイクルという事を考えるようになった。

当然、我が店のライフサイクルも考える。


店が生き延びていくのに必要なのは、

店の主張が来店される方の共感を

呼べるものであるかどうかを考え続ける事だ。

もう一つには、お客を飽きさせない仕掛けを持つことだ。

今の「流行り」の上に胡座をかいていちゃ、

ごく簡単に足下を掬われる。

いくら本が好きで、本の大切さを伝えたいと願っていても、

店に足を運んで貰わないと何も始まらない。

ネット上でもよい。

店の運営が出来てこそ、本への思いを語れるのだから。


店は常に変化革新をし続けなくちゃいけない。

変わってはいけないのは、揺るぎないその精神性だと思う。

個性的な店づくりが成功の秘訣なんて事をよく耳にするが、

それは一歩間違えると独りよがりな店に終わりかねない。

共感を呼べない店は潰れる。

そんな事を考え、日々、動くから店というのは面白い。

人と出会い、様々な考え方を聞くとワクワクする。

そしてこう思う。

今日は昨日とは違う成穂堂であろう。

明日は今日とは違う成穂堂であろう。