敵は本の奥深くに潜む | レトロショップ成穂堂ケンの苦悩と爆笑の日々

敵は本の奥深くに潜む

夏真っ盛りに引き取ってきた和本の整理にやっと取り掛かった。

こんなペースだからあちこちに本が積まれたままになってしまう。

或いはそのほうが古書店らしくていいかも知れない。


明治復刻版神事行灯初編
和本1




まあそれはさておき、「和本」と言ってもピンとこない方も多いと思う。

「和綴じ本」と言えば何となく「ああ、あれの事か」と、思い浮かぶかも。

昭和初期あたりまでは組まれた紙束の端に四ヶ所ほど穴を通し糸で綴じ、

ばらけないようした和本が作られていた。

(勿論、西洋の技術を取り入れた現代に繋がる製本もすでに登場している)


夢占吉凶秘傳書~安永甲午三年(1774年) 約240年前
古書1




和本には和紙が使われている。

一口に和紙といっても、その原材料は何種類かある。

書物用にはコウゾが多く使われていると思う。

長年和本も見ているが、小口こそ日焼けしているが、

中まで大きく日焼けしたものはみた事がない。

製本されてから数百年経とうが、紙の粘りがしっかりある。

多少引っ張った所で破れない。

毎回、折れやしわを伸ばしながら、

日本人の技術力というのは凄いなあと思う。


扶桑隠逸伝~寛文甲辰四年(1664年) 約350年前
古書3





因みに製紙技術の伝来は、610年、高句麗からとされる。

ただ、この和紙、虫がつきやすい。

いつの間にやら、見事なまでの孔道をつくる。

見ようによっては芸術だ。

この孔道を見て、誰もが銀色に身を包んだフナムシ擬きを思い浮かべる。

所謂、シミである。漢字に直すと紙魚と書く。

文字通り、紙に泳ぐ魚である。

ただ、潜らない。紙の表面を舐めるように薄く食べる。

芸術的に掘り進むのは、シバンムシという甲虫の幼虫。

漢字に直すと死番虫と書く。

げに恐ろしい。

和紙を好むのはフルホンシバンムシ。


小気味良く食された跡
虫




うちの和本も相当こやつらの被害に遭っている。

高価な和本をも、平気で食い荒らす。なんて贅沢な奴らだ。

今回入手した和本も、見事に食されている。

被害が広がらないよう、丁寧に探したが、

すでに成虫になって飛び立ったあとのようだ。

この度の戦闘は虚しく空振りに終わった。

我が敵は内にありというが、

古書店の敵は本の内に潜み、今日もほくそ笑んでいる。


ペタしてね