成穂堂、香炉を買う | レトロショップ成穂堂ケンの苦悩と爆笑の日々

成穂堂、香炉を買う

つい先日、いかにも上質な衣服を身にまとったご婦人がたずねてきた。

年の頃は七十前後。おっとりとした口調だ。

どうみても、うちの店に用があるような方ではない。

たまたま店の前を通ったのだか、

ふと不用なものを片付けようかと、思いたったとの事。

少しお話を聞き

「うちでも扱えますが、多分、古美術商に持って行かれた方が、良いお値段がつくと思います」

と、古美術商をお薦めした。

ご婦人は「色々、お話を聞けたのでこちらでお願いします。

いくつか試しに持ってきます」

と、言って帰って行かれた。

しかし、大阪弁じゃなかったなあ。

見るからに上品な方というのは大阪弁を使わないのだろうか?

それから数日後、ご婦人がショルダーバッグに

何やら入れてお越しになった。


品物を拝見すると、一つは花瓶。

銀箔を散りばめた綺麗なものだ。

もう一つは、香炉。

これは素人でも高価なものだと分かる。

15~20cm四方の小さなものだが、ずっしりと重い。

表面は塗が施してある為、材質が分からない。

裏返して脚の接地面をみると、銅独特の光を放っている。

底に何やら刻印があるが、すっとは読めない。

あれこれ推測しながら睨んでいると、

なんとはなしに漢字二文字だと分かる。

一文字目は「之」「広」「元」、二文字目は「苑」「宛」と読める。

直ぐに師匠に連絡を取った。

師匠は偶然にも、成穂堂の直ぐ近くまで来ているという事で、

五分とたたない内に店に来て下さった。

香炉を、暫くみていた師匠が「元威」だと言った。

蝋型鋳造の大家「二上元威」。その作品の迫力には圧倒される。


ピンボケはお許しあれ
香炉1


香炉22


香炉3


香炉4



画像の作品は大正7年制作。

すでに100年近く経つのにすこぶる状態も良い。

買取り額はこちらの提示した見積りで了承して頂けた。

ご婦人には「価値の分かる方の手元に行く事を願います。

また、別のものを持って来ます」と、言って頂けた。

帰り際、ご婦人が

「ところで、ここはとっても怪しいお店に見えましたよ。

なぜ足を踏み入れたのか不思議」

と、言って笑ってらした。

やっぱり、怪しげなんだ。

みなさん、二言目には「怪しげな店」とおっしゃる。

何故なんだろう?

まあいい。

これから手付かずのままだった

和本の整理をしなくちゃいけない。

久しぶりに、これぞ古書店という仕事だ。


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