カクレという不思議な場所
師匠から手伝いに来いとの連絡。
むかった先は通称「カクレ」と呼ばれる一角だった。
道順を聞いても、そんな所に道路は通っていない気がした。
「Kenさんの店からやったら、310号線を南に下るねんな。
○○の交差点を越えると大きな左カーブがあるやろ」
「坂道の取っ掛かりの所ですよね」
「そうそう、その交差点を越えて直ぐ右側に細い道路があるねん」
「そんな所に脇道、ありましたかね?」
「それが、あるねん。目印になるものがないので、説明しにくいんや」
「まあ、兎も角向かいますわ」
と、いう事で僕は「カクレ」目指して車を走らせた。
が、見事に迷ってしまった。
適当に車を止めて、地元の人らしき年配の方に道を訊ねたが、
「カクレ」なんていう場所は知らないと言う。
住所を見せると、どうも僕は見当違いの所にいるらしいという事だけは分かった。
師匠に電話を入れ、現在地を言うと、
「わりと近いけど、筋が違うわ。
○○の交差点まで戻って、もう一度よーく右手を見てみ」と。
今度は注意深く言われた道路を探した。
これか?
その脇道というのは、急なカーブを描きながらの上り坂になっていた。
ふとした目には袋小路の路地にしか見えない。
地元の人にもあまり知られていない一角。
道路は何か獣道をちょっと広げてみましたと、いう感じだ。
自動車一台がやっと通れるその坂道を少し入ると、風景が一変した。
因みにこんな細い道路なのに、一通ではない。
対向車が来たら、道路から少しへこんでいる田んぼの畔にでも車を寄せるしかない。
下手をすると田んぼに落っこちるよなあと思いながら、車を進めた。
しかし、民家は並んでいるのだが、人の気配がない。
再度、師匠に電話を入れると、
「その坂道を上がっていくと、大きな池があるからその池に沿って進んでおいで。
その先の竹林の手前に建っている家に来てほしいねん。
わしの車が止まっているから分かるわ」
本当にこの道であっているのか?ざわざわとした不安が走る。
僕は妙な空間に引きずり込まれたのではなかろうか?
数十メートル東側には堺の中心部と河内長野を結ぶ道路を
ひっきりなしに車が通っている・・・はずだ。
それにひきかえ、妙に懐かしい空気と静寂が、ここら一帯を包んでいる。
子供の頃、探検ごっこをしていて、意を決して踏み込んだ野原のようだ。
その野原はレンガ塀で囲まれた向こう側にあり、
何故かカッパが住むと言われていた。
そこはやはり、まわりとは速さの違う時計が時を刻んでいた。
やがて師匠の言っていた池があり、
その先には見慣れた師匠の車が止まっていた。
僕は「師匠、師匠は本物ですよね」と、聞きたい気持ちを押し殺した。
それを察したのか「不思議な場所やろ。ここは飛び地でな、地図を見ても分からんかも知れん」
と、師匠が笑いながら言った。
「人の気配がしませんね」と、僕は言った。
「ハハハ、ここは平家落武者の隠れ里やったんや。
人はちゃんと住んでる」
それで、「隠れ」と言うのか。
「さあ、Kenさんは本を運び出してや」と、師匠。
車の荷室を開けると同時に、
うるさいほどの蛙の鳴き声が聞こえだした。
どの土地でもこのような、時がとまったような場所があるのだろう。
・
・
・
「カクレ」での時間。
あれは現実だったのだろうか?
持ち帰った段ボール箱を開けると、
木の葉がぎっしり詰まっていたりしないだろうか?
何とも白日夢をみたような気分だ。
むかった先は通称「カクレ」と呼ばれる一角だった。
道順を聞いても、そんな所に道路は通っていない気がした。
「Kenさんの店からやったら、310号線を南に下るねんな。
○○の交差点を越えると大きな左カーブがあるやろ」
「坂道の取っ掛かりの所ですよね」
「そうそう、その交差点を越えて直ぐ右側に細い道路があるねん」
「そんな所に脇道、ありましたかね?」
「それが、あるねん。目印になるものがないので、説明しにくいんや」
「まあ、兎も角向かいますわ」
と、いう事で僕は「カクレ」目指して車を走らせた。
が、見事に迷ってしまった。
適当に車を止めて、地元の人らしき年配の方に道を訊ねたが、
「カクレ」なんていう場所は知らないと言う。
住所を見せると、どうも僕は見当違いの所にいるらしいという事だけは分かった。
師匠に電話を入れ、現在地を言うと、
「わりと近いけど、筋が違うわ。
○○の交差点まで戻って、もう一度よーく右手を見てみ」と。
今度は注意深く言われた道路を探した。
これか?
その脇道というのは、急なカーブを描きながらの上り坂になっていた。
ふとした目には袋小路の路地にしか見えない。
地元の人にもあまり知られていない一角。
道路は何か獣道をちょっと広げてみましたと、いう感じだ。
自動車一台がやっと通れるその坂道を少し入ると、風景が一変した。
因みにこんな細い道路なのに、一通ではない。
対向車が来たら、道路から少しへこんでいる田んぼの畔にでも車を寄せるしかない。
下手をすると田んぼに落っこちるよなあと思いながら、車を進めた。
しかし、民家は並んでいるのだが、人の気配がない。
再度、師匠に電話を入れると、
「その坂道を上がっていくと、大きな池があるからその池に沿って進んでおいで。
その先の竹林の手前に建っている家に来てほしいねん。
わしの車が止まっているから分かるわ」
本当にこの道であっているのか?ざわざわとした不安が走る。
僕は妙な空間に引きずり込まれたのではなかろうか?
数十メートル東側には堺の中心部と河内長野を結ぶ道路を
ひっきりなしに車が通っている・・・はずだ。
それにひきかえ、妙に懐かしい空気と静寂が、ここら一帯を包んでいる。
子供の頃、探検ごっこをしていて、意を決して踏み込んだ野原のようだ。
その野原はレンガ塀で囲まれた向こう側にあり、
何故かカッパが住むと言われていた。
そこはやはり、まわりとは速さの違う時計が時を刻んでいた。
やがて師匠の言っていた池があり、
その先には見慣れた師匠の車が止まっていた。
僕は「師匠、師匠は本物ですよね」と、聞きたい気持ちを押し殺した。
それを察したのか「不思議な場所やろ。ここは飛び地でな、地図を見ても分からんかも知れん」
と、師匠が笑いながら言った。
「人の気配がしませんね」と、僕は言った。
「ハハハ、ここは平家落武者の隠れ里やったんや。
人はちゃんと住んでる」
それで、「隠れ」と言うのか。
「さあ、Kenさんは本を運び出してや」と、師匠。
車の荷室を開けると同時に、
うるさいほどの蛙の鳴き声が聞こえだした。
どの土地でもこのような、時がとまったような場所があるのだろう。
・
・
・
「カクレ」での時間。
あれは現実だったのだろうか?
持ち帰った段ボール箱を開けると、
木の葉がぎっしり詰まっていたりしないだろうか?
何とも白日夢をみたような気分だ。