福沢君、何ならうちに住みなさい | レトロショップ成穂堂ケンの苦悩と爆笑の日々

福沢君、何ならうちに住みなさい

「贅沢を言っちゃいかん。ガラケーで充分だ」

二男にそう言っていた。
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ある日、二男がとぼとぼと学校から帰ってきた。

「どうした?」と、聞くと

「今日はクラブ中止やって」と、力なく言う。

防具の手入れをして、今朝張り切って高校に向かったのに。

事情を聞くと、昨夜LINEで稽古中止の連絡が回っていたとの事。

二男はガラケーなので、うっかり連絡が漏れたらしい。

さらに聞くと二男以外部員全員スマホを持っているのだとか。

さらにさらに、中学時代の友達仲間もスマホなので、連絡の基本はLINEだと。

おいらの時代は糸電話だった。

近所の悪ガキが集まって、家から家に糸を引っ張る。

二階の窓同士を開け、どうにかこうにか糸を張り、

丸い筒を口にあて或いは耳にあて「おお~」と歓声をあげる。

○○ちゃんちに連絡しにいってくると、ゴム草履で駆けて行く。

そんな時代の方が牧歌的でよかった。


スマホ?ちょこざいなと思うが、

それをどうのこうの言った所でどうなるものでもない。

覚悟のしどころのようだ。

二男に「おいらについてきな。スマホに変更しに行くぞ」

と、肩で風を切りながら僕は、玄関に向かった。

二男は狂喜乱舞。

という事で、また家計を圧迫する種が増えた。

話はかわるが、二男の通う高校はしょっちゅう

なんだかんだと費用の徴収がある。

夏の合宿なんて、ちょっとした旅行だ。

親の負担を考えてくれよなあ~、と思う。

受験の際に嬢ちゃん、坊っちゃん学校ですよと言われたが、

大したことあるまいと高をくくっていた自分が悔やまれる。

長男の高校は別名「庶民の私学」と言われるほど、

ざっくりとした高校だった。

この差は思った以上に大きく、先々が思いやられる。


一段落着いたかと思っていたら、

追い討ちを掛けるように二男が言う。

夏用の袴が欲しいと。

「この4月に用意したばかりでしょうが」と言うと、

すでに短いと言う。

そんな訳ないやろと、実際に穿かせてみると、

くるぶしが隠れる位置まであった裾が、

この短期間でくるぶしの上にきている。

世にずりパンというのがある。ずり袴というのはどうだ?

剣道界に新しい風を吹かせよ、と言ってみたが、

「なあ、おとーさん。人間諦めが肝心やで」と。

うちは剣道具の買取りをしている関係上、

新品の道衣もそこそこ手に入る。

何かしら在庫はないかと探してみたが、

都合の良いものは見つからない。

二男は自分の小遣いで買うので、

防具屋に連れていって欲しいと言うが、

そんな安い買い物でもないし、「そうかい」とも言えない。

何のクラブでもそうだろうが、

あれこれと費用が嵩むようにできているものだと感心する。

福沢君はあまり落ち着いて成穂堂家にはいないようだ。

親たるもの、その分頑張って働きなさいと言う事か。


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