闇を走る影 | レトロショップ成穂堂ケンの苦悩と爆笑の日々

闇を走る影

泣く子も黙る丑三つ時と書き出したいが、

21時を少し回ったくらいの事である。


誰もいない店内から、物音がした。

いやいや、気のせいではない。

棚の本が倒れたのか?

僕は店内の電気をつけ、物音のした方に歩み寄った。

最下段の本が倒れかかり、数冊が床に落ちていた。

ブックエンドを当てていなかったからだろう。

僕は本を立て直し、事務所に戻りまたパソコンに向かった。

事務所には出入口が二ヶ所ある。

その一つは荷物を持ったまま出入りしやすいよう、

扉をつけず、透明シートのカーテンを掛けている。

それはちょうど僕が使うパソコンの右手にある。

暫くパソコンに向かって作業をしていると、

なにやらカーテンの向こうに影が走ったような気がした。

自慢ではないが、僕はかなり動体視力がよい。

視野もかなり広い。・・・と、思う。

探偵のごとく素早くカーテンに目を移したが、何も変わった事はない。

店内を覗きこんだが、別段これといった事もない。

店内の電気をつけっぱなしだったのに気がついて、消灯した。

それから暫くパソコンに向かっていたが、

カーテン越しに何やら気配を感じる。

何かがいる。


出たか!出たのか?

ついに僕は異形の生き物に遭遇するのか!



僕はパソコンデスクに立て掛けてある木刀に手を伸ばした。

そして、高鳴る鼓動を抑え、視線をカーテンに移した。

そいつは、少し首を傾げたような格好でこちらを見ていた。

何処かで見たような姿かたちだ。

異形のものではない。紛れもなくイタチだ。

その距離2mあるかないか。

僕としっかり目があい、かたまるイタチ。

こういう時、僕はどうすべきなのか?

僕もかたまり、次の行動を見ていればよいのか?

威嚇すればよいのか?

それとも、おいで、おいでをすればよいのか?



こんなのがこちらを見ていた
イタチ




・・・と、我にかえったイタチが、

驚くほどの速さで店内に消えていった。

向こうもびっくりしたのだろうが、

こちらもびっくりした。

この店というか倉庫は隙間だらけだ。

その気になれば、何処からでも潜り込める。

店内に入れば、床下もあるし、天井裏もある。

恐らく、居心地は抜群にいいはずだ。

イタチが道路の溝から溝へ移動する姿は

幾度となく見ているが、

まさか、店内にいるとは思わなかった。

しかし、間近でイタチを見ると、結構大きいのに驚いた。

毛並みもきれいなものだ。

が、住み着いてしまうと厄介な事になるよな。

多分、鳥獣保護法とか狩猟法とかいった規制があったと思うので、

役所に相談に行かないとだめなような気がする。

この辺り、稀にタヌキが道路を横切るのも見かける。

彼らもこうして市街地に出てこざるを得なくなっているのだろう。

厄介なのは僕たち人間の方なのかも・・・





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