お客、遠方よりきたる。 | レトロショップ成穂堂ケンの苦悩と爆笑の日々

お客、遠方よりきたる。

一昨々日の事。

昼食を取っている所に電話が鳴った。

僕は口に入れていたものを慌てて飲み込んで、受話器を取った。

受話器の向こうから

「今、そちらの近くに来ていると思うのですが、道に迷いまして」

と、少し大阪弁とはイントネーションの違った男性の声がした。

僕は、まわりに見える建物等を聞き、店への道順を案内した。

受話器を置いてから、用件を聞き忘れた事に気がついた。

まあ来られたら分かるかと思い、残りの昼食を急ぎかきこんだ。

少しして、店前に車が止まり、先程の電話の男性が入ってきた。

本を売りに来たのだと言う。

岩波文庫、新書合わせて150冊ほど。

少しお話をすると、僕と同年代で無類の本好きという事が分かった。

京都に住んでらしたが、今は千早赤阪村にお住まいだと言う。

楠木正成の居城で有名な地だ。

千早赤阪村から堺、結構な距離だ。

僕は「お仕事のついでか何かで寄られたのですか?」と、訊ねた。

それもあるが、ネットで成穂堂のHPをご覧になって興味を持たれた、という事だった。

HPには、これといって魅力的な事は書いていない。

僕が不思議がっていると、

「店名が面白いじゃないですか。成穂堂と書いて『なるほどう』。

信じられないくらい短い営業時間。

地図を見ると、住宅地らしい所にポツンとある。

とりあえず、試しに行ってみようと思いました」と。

また、もの好きな方もいるものだ。

思わず、話が弾みこの連休中にまた来ますと。

で、昨夕、本当に男性がお越しになった。

畑で取れたと言って、大根の束も頂いた。

そして車の後部座席と荷室には本を詰めたダンボール箱がびっしりと積み込まれていた。

専門書と岩波関係本が500冊ほどあったが、

それでも、ごく一部を整理されただけのようだ。

お持ちになった専門書は社会科学書と哲学書が中心で、

大学時代、ルカーチの研究をなさっていたとの事だ。

ルカーチといえば、ハンガリー出身の哲学者であり、

マルクス主義学派に属する人物。

「ゲーテとその時代」なんかが知られているような気がする。

それは兎も角、結構な距離をわざわざ訪ねて来て頂いたのが、なんとも嬉しい。

何度も書いているが、僕はとても不器用で、

こうして、奇特とも言える方々がいなければ、

とても今日までやってこれなかった。

改めて、店というのは、人と人が出会う一つの場であり、

それはこの町に限らず、なくてはならないものだと思った。

本屋の匂いや空気を楽しむには実店舗がいる。

ネットがなければ繋がれない人たちがいる。

実店舗とネット、どちらが欠けてもいけない。

そういう時代なんだなあ・・・

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