風に吹かれて
先日、車屋Mさんの温かいお言葉に、
不覚にも涙腺がゆるんだ僕である。
これには車探しにまつわる後日談ならぬ、前日談がある。
遅い昼食をとっている所に、一本の電話が入った。
口に食べ物が入っているのにそこは商売人の性。
一刻も早く電話をとらなくてはと
口に食べ物があるまま受話器をとってしまった。
口に放り込んでいた唐揚がやや大きく、うまく飲み込めない。
「はい、なるほろうです」
「あっ、KENさん。お久しぶり、Sです。今、お忙しい?」
新刊屋時代にお世話になっていた出版業界の先輩からだった。
びっくりした勢いで、唐揚は味わうことなく胃の中へ。
僕は何事もなかったかのように言った。
「いやあ、ご無沙汰しています。
Sさんはどうしていらっしゃるのですか?」
「僕?僕は隠居生活みたいな事をしてますよ」と、Sさんは笑った。
「ところでKENさん、車は見つかった?」
「えっ、車ですか?いや、あのまだですが」
僕の頭はフル回転した。
僕が車を探しているのをどうして知ってらっしゃるのか?
真顔でまわりに言うほどの事でもない。
んっ?ブログ?フェイスブック?
いやいやそんな事はどうでもいい。
問題は恐らく僕がのたりくたりと仕事をしている事を
手に取るようにご覧になっているという事だ。
狼狽している僕にSさんは
「KENさん、僕の車に乗りますか?」
「と、言いますと?」
「いや古い車なんですけどね、状態はいいのです。
あまり乗らないので、KENさんの仕事用にどうかと思ってね。
よければ差し上げます」
Sさんの車はどちらかと言うと高価な車だ。
とてももったいなくて商用には使えない。
かといって自家用にしますとも言えない。
「いやあとても有難いお話なのですが、
効率の良い軽自動車を購入するつもりなのです」
と、僕はお断りする事にした。
「いやいや、気になさらんで下さい。
家内はそんな失礼な事をいいなさんなと言うのですがね」
「わざわざお電話を頂いたのにすみません」と言うと
「こちらこそ、気を遣わせて申し訳なかったです。
また、会いにいきますよ。兎も角、頑張んなさい」
と言う事で電話は終わった。
僕は新刊業界から姿を消して6年になるが、
今でもこうして気にかけてくださっている方がいる事を
ほんとうに有難く思う。
Sさんも僕も、書店や出版業界が元気だった時代を経験している。
どっちを向いて走ればいいのかなあ・・・
風の歌を聴けと村上春樹氏は書いているし、
答えは風の中にあるとPPMは歌っている。
花粉症に目をこすりながら
春の風に吹かれて空を見上げる僕であった。

不覚にも涙腺がゆるんだ僕である。
これには車探しにまつわる後日談ならぬ、前日談がある。
遅い昼食をとっている所に、一本の電話が入った。
口に食べ物が入っているのにそこは商売人の性。
一刻も早く電話をとらなくてはと
口に食べ物があるまま受話器をとってしまった。
口に放り込んでいた唐揚がやや大きく、うまく飲み込めない。
「はい、なるほろうです」
「あっ、KENさん。お久しぶり、Sです。今、お忙しい?」
新刊屋時代にお世話になっていた出版業界の先輩からだった。
びっくりした勢いで、唐揚は味わうことなく胃の中へ。
僕は何事もなかったかのように言った。
「いやあ、ご無沙汰しています。
Sさんはどうしていらっしゃるのですか?」
「僕?僕は隠居生活みたいな事をしてますよ」と、Sさんは笑った。
「ところでKENさん、車は見つかった?」
「えっ、車ですか?いや、あのまだですが」
僕の頭はフル回転した。
僕が車を探しているのをどうして知ってらっしゃるのか?
真顔でまわりに言うほどの事でもない。
んっ?ブログ?フェイスブック?
いやいやそんな事はどうでもいい。
問題は恐らく僕がのたりくたりと仕事をしている事を
手に取るようにご覧になっているという事だ。
狼狽している僕にSさんは
「KENさん、僕の車に乗りますか?」
「と、言いますと?」
「いや古い車なんですけどね、状態はいいのです。
あまり乗らないので、KENさんの仕事用にどうかと思ってね。
よければ差し上げます」
Sさんの車はどちらかと言うと高価な車だ。
とてももったいなくて商用には使えない。
かといって自家用にしますとも言えない。
「いやあとても有難いお話なのですが、
効率の良い軽自動車を購入するつもりなのです」
と、僕はお断りする事にした。
「いやいや、気になさらんで下さい。
家内はそんな失礼な事をいいなさんなと言うのですがね」
「わざわざお電話を頂いたのにすみません」と言うと
「こちらこそ、気を遣わせて申し訳なかったです。
また、会いにいきますよ。兎も角、頑張んなさい」
と言う事で電話は終わった。
僕は新刊業界から姿を消して6年になるが、
今でもこうして気にかけてくださっている方がいる事を
ほんとうに有難く思う。
Sさんも僕も、書店や出版業界が元気だった時代を経験している。
どっちを向いて走ればいいのかなあ・・・
風の歌を聴けと村上春樹氏は書いているし、
答えは風の中にあるとPPMは歌っている。
花粉症に目をこすりながら
春の風に吹かれて空を見上げる僕であった。
