朋友、逝く | レトロショップ成穂堂ケンの苦悩と爆笑の日々

朋友、逝く

追いかけ、削除してしまうかも知れない記事である。

タイトルをご覧頂いたように、明るい内容ではない。


先日、有栖川氏から新刊本が送られてきたという記事を書いた。

そんな事から子供たちに、

氏の本で面白いものがあるので見せてやると、本棚をガサゴソとしていると、

本棚の奥から、懐かしい表紙の小冊子が出てきた。

大昔につくった同人文芸誌のようなものである。

文芸誌と呼ぶには、ページ数も内容も余りにも薄っぺらい。

メンバーは5名だった。

懐かしい名前がそこにあった。

みんな若く希望に満ちていた。

僕は、まともな文章なんて書けないので、

適当にごまかしたショートショートを載せていた。

その浮世離れしたペンネーム達の中に、

一人異色を放つ名がある。

まあそれはいい。

今一人、その中で洒落たペンネームをつけていた男が、

4年程前、自宅近くの店に転勤でやってきた。

店は僕の古巣だった企業が運営している店だ。

当時、僕の店もその至近距離にあったので、

ちょくちょく話をしに行った。

僕が店を今の場所に移すのと前後するように、彼も転勤して行った。

鉄道と読書とビールが好きで、

おおよそ社会をうまく泳げるタイプではなかった。

案の定、まわりはそれなりの役職になっても

彼は長年店長職のまま現場にいた。

でもその人柄は、どこまでも誠実で愛すべきものだった。


一昨日、明け方僕は、

訳の分からない寝苦しさに襲われて目が覚めた。

少し時間が経つと、気分も落ち着き再び僕は眠りに落ちた。

僕は何だか寝不足気味のまま店に行き、

知人から頼まれた用件を済ますため、

半年振りに、古巣にいる後輩にメールを入れた。

直ぐに、改めて連絡をするというリメールが戻ってきた。

その日の夕刻、後輩から電話が入った。

一通りこちらの用件を伝え終わった所で

後輩に一瞬沈黙があった。

「ところで、KENさん、○○さんが亡くなりました」

と、重苦しい声がボソボソとした。

鉄道と読書とビールをこよなく愛した彼の名だった。

一瞬、僕はそれが何を意味しているのか理解できなかった。

「今、何ていった?」

そう言うのが精一杯だった。

後輩は、僕にその状況を細かく説明した。

急逝だった。

僕は、その話を半分も聞いていなかったように思う。

それがいつ起きたかなんて僕にはたいした問題ではない。

問題は、かつての朋友が世を去ったという事だ。

古巣は全国チェーンなので、彼は

「全国津々浦々、旅ができていいもんです」

なんて冗談を言っていた。

彼は、僕の数年後輩で、一緒の店に勤めた事もある。

自主研修旅行だと言って、一緒に旅に出たこともある。

スキーに行った事もある。

野球をした事もある。

定期的に集まり、飯を食らい、つまならい冗談を言い笑った。



「ビールを飲みながら、本を飲む。これほど愉快なことはないのだ。バーロ」

彼は調子が乗ってくると、言葉尻に必ず「バーロ」をつけた。

「ばかやろ~」ではダメなのかと聞くと

椎名誠+沢野ひとし風にはそれは、イカンのですと、言っていた。

そして、暇さえあれば本当にビールを飲み本を読んでいた。

僕が、その企業を退社して、徐々に行き来がなくなり、

会う機会はめっきり減っていたが、友は友である。

後輩には話さなかったが、

僕が明け方、突然飛び起きたのは、

虫の知らせというものだったのだろうか?

人には言葉で説明できない何かがあるのだろうか?

物事は偶然には起こらないと言うけれど、

こういう時には、その言葉は僕には重い。

そして、昨日、今日とちょっとばかり、不甲斐ない体をさらしている。


「おいら、あんたのこよなく愛した本たちの為に

この先も走り続けるぜ。おいら、へたらないぜ。バーロ!」