アーネストボレル
カードを買いに来ていたちびっこ達も帰り、
本の整理の方も一段落ついた。
よしっ、おいら一眠りするぜ、とニンマリした所に、
「居るかえ?」と店入り口から聞き覚えのある声がした。
師匠ですな、あの言い回しは。
僕は間の抜けた声で「あ~い」と、返事をした。
事務所のドアを開けながら、
「あれっ、今、寝ようとしてたんちゃう? 技は見て盗めと言ったけど、昼寝を盗んだか」
と、高笑いをしている。
あかんがな、正味、寝損ねた。
師匠が「ちょっとばかり、本と面白いものが、入ってん。本はあとで取りにおいで」
と言って、ポケットから腕時計を取り出した。
「分かるかえ?」
僕は、その腕時計を受け取って、
上げたり下げたり、透かしたりしてみたが、分からない。
「ファンシーショップで売っているような腕時計にみえますわ。
ん~、それにしては凝ってますね」
「30年以上前のものや。スイス製のアーネストボレルという時計や」
僕は頷いた。
「花びらが無限に広がっていっているように見えるやろ。
で、花びらの先端にいくつもの光る石があるやろ」
再び、ボクは頷いた。
「ダイヤモンドや」と、師匠が言った。
花びらのよなものは開きながら、くるくる円を描いて動いているようにみえる。キラキラとほんとにきれい。

裏面はこのようにスケルトンになっている

「おお~」と、僕は驚いた。
「ウソやがな。そんな奇妙に光るダイヤあらへん」
「ほな、何ですの?」
「あはは、石なんて入ってへん。よう見てみ」
僕は宝石屋が使うようなルーペで時計盤をのぞき込んだ。
ガラス面自体に整然と丸く小さな凹をつけて、
それがきれいな円を描いている。
そして、花びらの先端が凹に収まるように細工してある。
それが一瞬大きく映し出されて、きれいに光るのである。
なんと緻密な工作だろう。
師匠は笑いながら
「まあ、色々勉強しなはれ」
「はい、きばります」
「その腕時計、好きにさばいてええで。小遣い程度にはなるわ。
ほな、ご機嫌さん」
いつもふらっときて、何かしら商売のヒントをくれる師匠。
やはり、追いつけるような人ではない。
本の整理の方も一段落ついた。
よしっ、おいら一眠りするぜ、とニンマリした所に、
「居るかえ?」と店入り口から聞き覚えのある声がした。
師匠ですな、あの言い回しは。
僕は間の抜けた声で「あ~い」と、返事をした。
事務所のドアを開けながら、
「あれっ、今、寝ようとしてたんちゃう? 技は見て盗めと言ったけど、昼寝を盗んだか」
と、高笑いをしている。
あかんがな、正味、寝損ねた。
師匠が「ちょっとばかり、本と面白いものが、入ってん。本はあとで取りにおいで」
と言って、ポケットから腕時計を取り出した。
「分かるかえ?」
僕は、その腕時計を受け取って、
上げたり下げたり、透かしたりしてみたが、分からない。
「ファンシーショップで売っているような腕時計にみえますわ。
ん~、それにしては凝ってますね」
「30年以上前のものや。スイス製のアーネストボレルという時計や」
僕は頷いた。
「花びらが無限に広がっていっているように見えるやろ。
で、花びらの先端にいくつもの光る石があるやろ」
再び、ボクは頷いた。
「ダイヤモンドや」と、師匠が言った。
花びらのよなものは開きながら、くるくる円を描いて動いているようにみえる。キラキラとほんとにきれい。

裏面はこのようにスケルトンになっている

「おお~」と、僕は驚いた。
「ウソやがな。そんな奇妙に光るダイヤあらへん」
「ほな、何ですの?」
「あはは、石なんて入ってへん。よう見てみ」
僕は宝石屋が使うようなルーペで時計盤をのぞき込んだ。
ガラス面自体に整然と丸く小さな凹をつけて、
それがきれいな円を描いている。
そして、花びらの先端が凹に収まるように細工してある。
それが一瞬大きく映し出されて、きれいに光るのである。
なんと緻密な工作だろう。
師匠は笑いながら
「まあ、色々勉強しなはれ」
「はい、きばります」
「その腕時計、好きにさばいてええで。小遣い程度にはなるわ。
ほな、ご機嫌さん」
いつもふらっときて、何かしら商売のヒントをくれる師匠。
やはり、追いつけるような人ではない。