世にも奇妙な渋滞 | レトロショップ成穂堂ケンの苦悩と爆笑の日々

世にも奇妙な渋滞

先を急いでいた。

なのに、道路渋滞で車はとろとろとしか動かない。

こんな田舎町で渋滞なんて、まずない。

何かしら事故かと思ったが、それらしき気配はない。

焦った所で渋滞が解消される訳でもない。

気晴らしにカーラジオの電源を入れてみた。

なんという事もない音楽が流れた。

僕は溜め息をついて、

少し頭を出しているカセットテープをデッキに押し込んだ。



僕の車のカーステレオには未だにカセットデッキがつまれている。

兎に角、古くおかしな人間である。

僕が聴くものといえば、オールディーズか

日本のごく一部のアーティストだけ。

一昔もふた昔も前のものだけだ。

要は時代に取り残された人間なのだろう。

一応4スピーカーだが、もう壊れる寸前だ。

ボリューム調節もままならない。



突然、爆音ともいえるほどのボリュームで曲が鳴り響いた。

僕は驚きの余り、ブレーキを思い切り踏み込んでしまった。

それからアワアワしながら、ボリュームを下げた。

車自体、殆ど動いていなかったからよかったものの、

そろそろ取り替えなくちゃ事故を起こしかねない。

でも、カセットを聴くことができるような代物、手に入るのだろうか?


ところで、この渋滞の原因はなに?どこまで続いているのか?

僕は、窓を開けて、前方を見てみた。

何も見えない。

窓を閉めかけたら、心なしかバババババ・・・という

聞きなれない音が耳をかすめた。

もう一度、窓を開けてよ~く聞くと、

遥か前方で、何やら継続的な音がする。

んん~、何だろう???

考えていても仕方ない。

窓を閉め、懐かしい曲に耳を傾けた。

“スマイル オン ミ~” と軽快な曲が流れる。

音源は分からないけど、

昔はよくあちこちから曲を集めて、

オリジナル集をつくったものだ。

そう、こんな時は、微笑みだよな。

そんな事を思っている間もなく、

渋滞は急に解消された。

降って湧いたような渋滞が泡のように消えた。

数百メートル進んだ所で、渋滞の原因が分かった。

トラクターともう1台得体のしれない農耕機らしきものが、

田んぼへと移動していたのだ。

やけに道路が泥で汚れていると思った。

もっと、はよ気付けよ、と思う。

そうか、もう田植えの季節がくるのか。

季節の移ろいは、思いのほか早い。


ほほえ~みは~、めもとをは~しる~・・・


言うてる場合やない。急がなくちゃ・・・




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