本屋物語、なんてね
カウンターで精算を済ませながら少年は言った。
「河内長野駅に行くには、どう行けばいいですか?」
青年というには、少し幼さを感じる。
「足は何?」
「歩いて行きます」
僕は、驚いて言った。
「歩いて?ここから?」
「はい。遠いですか?」
「歩くには、ちょっと辛いと思う」
堺市の片田舎にある新刊本屋でのちょっとした出来事だ。
少年は少し考えていたが、
「では道明寺への道のりは分かります?」
僕は、「ここからだと、平尾峠を越えるのが早いと思うけど、バスも通っていないと思う・・・」
とまで、説明をして、
「一体、あなたはどこに行きたいの?」と、尋ねた。
「道明寺の自宅に戻りたいのですが、途中で道が分からなくなって」
道明寺楼門

あまりによい天気だったので、
気の向くまま歩いてみようと思ったらしい。
道明寺からここまでだと、直線距離でも10Kmはあるか?
それなりに勾配のある坂道を登ったり下ったり、
紆余曲折しながらここまで来たのだろう。
ここらで引き返すのは賢明な判断だと思う。
河内長野駅への道を尋ねたのは、
どうも疲れてきたので、電車に乗って近鉄道明寺まで戻ろうと考えた。
特に河内長野駅がいいという訳ではなく、
他に適当な駅名が浮かばなかったからのようだ。
それなら富田林駅へ向かった方が、まだましだ。
しかし、まもなく夕まづめだ。
日が落ちると、道に迷う可能性も高い。
このまま、放り出す訳にもいかない。
さりとて店を空ける訳にもいかない。
僕は腕組みをして思案した。
そのやり取りを聞いていたのであろう、
一人の紳士が近づいてきた。
店のお得意さんだ。
「道明寺まで行かはんの?私、車で富田林駅を通過するので、そこまで乗っていく?」
と、僕と少年を交互に見ながら、紳士は言った。
そして、店を出て行く時「差し出がましいことですが、いいですか?」
と、遠慮深く僕に言った。
僕は「宜しくお願いします」と言った。
後日、その紳士が店に立ち寄って、僕ににっこり微笑んだ。
そして、言った。
「例の少年、深々とお礼をして帰って行きましたよ。
面白い人になりそうですね」
うかうかと顔見知りにもついていけない世の中だ。
だけど、こんな心温まるような、ちいさな物語もある。
「河内長野駅に行くには、どう行けばいいですか?」
青年というには、少し幼さを感じる。
「足は何?」
「歩いて行きます」
僕は、驚いて言った。
「歩いて?ここから?」
「はい。遠いですか?」
「歩くには、ちょっと辛いと思う」
堺市の片田舎にある新刊本屋でのちょっとした出来事だ。
少年は少し考えていたが、
「では道明寺への道のりは分かります?」
僕は、「ここからだと、平尾峠を越えるのが早いと思うけど、バスも通っていないと思う・・・」
とまで、説明をして、
「一体、あなたはどこに行きたいの?」と、尋ねた。
「道明寺の自宅に戻りたいのですが、途中で道が分からなくなって」
道明寺楼門

あまりによい天気だったので、
気の向くまま歩いてみようと思ったらしい。
道明寺からここまでだと、直線距離でも10Kmはあるか?
それなりに勾配のある坂道を登ったり下ったり、
紆余曲折しながらここまで来たのだろう。
ここらで引き返すのは賢明な判断だと思う。
河内長野駅への道を尋ねたのは、
どうも疲れてきたので、電車に乗って近鉄道明寺まで戻ろうと考えた。
特に河内長野駅がいいという訳ではなく、
他に適当な駅名が浮かばなかったからのようだ。
それなら富田林駅へ向かった方が、まだましだ。
しかし、まもなく夕まづめだ。
日が落ちると、道に迷う可能性も高い。
このまま、放り出す訳にもいかない。
さりとて店を空ける訳にもいかない。
僕は腕組みをして思案した。
そのやり取りを聞いていたのであろう、
一人の紳士が近づいてきた。
店のお得意さんだ。
「道明寺まで行かはんの?私、車で富田林駅を通過するので、そこまで乗っていく?」
と、僕と少年を交互に見ながら、紳士は言った。
そして、店を出て行く時「差し出がましいことですが、いいですか?」
と、遠慮深く僕に言った。
僕は「宜しくお願いします」と言った。
後日、その紳士が店に立ち寄って、僕ににっこり微笑んだ。
そして、言った。
「例の少年、深々とお礼をして帰って行きましたよ。
面白い人になりそうですね」
うかうかと顔見知りにもついていけない世の中だ。
だけど、こんな心温まるような、ちいさな物語もある。