郵便配達はベルを鳴らさない
「郵便受けにこれが頭をだして押し込まれていたわよ。
インターホンを鳴らして玄関口まで持ってきてくれればいいのにね」。
リビングに入った僕に、家内がゆうメールらしきものを手渡しながら言った。
発送元は徳間書店だった。
「徳間?版元さんやなあ。心当たりないで」
と、鼻をグスグスさせながら僕は言った。
封を開けてみると、渋い装丁の単行本が入っていた。
有栖川有栖さんの新刊だ。
デビュー以来、新刊が出る度に、きっちり送って下さる。
有り難さと共に恐縮する。
紛いなりにも、
ミステリーを読んでみようと思うようになったのは、
有栖川さんのお陰だ。
それまで、僕は海外ミステリーはおろか
日本の作家物でも、全くの門外漢だった。
こうして、読めるジャンルが増えた事は、喜ばしい。
送られてきた本のタイトルは「高原のフーダニット」。

「うまくなったなあ。褒めてやろう」
なんて、ぶつぶつ言いながら読んでいたら
「あのね、一行もまともに書けない人が
どなた様に向かってそんな無礼極まりないことが言えるの」
と、家内が呆れ顔で言った。
「僕に褒められると言うことは、それだけ実力派という事の証やがな」
と、本から目をそらさずに僕は言った。
「1冊でも上梓して、世間様に認められてから、そういうこと言ったら」
そういい捨てて家内は台所に消えていった。
「本を書けるほどの文才があれば、とっくに作家になっているわさ・・・」
僕は、家内に聞こえないように小声で言った。
たまには、ご機嫌伺いをせねば・・・
ところで、僕にはおかしなクセがある。
単行本の多くには、紐のスピンがついている。
紐栞といえばいいのだろうか?
折角付いているのに、僕はこれを使わない。
大層に考える事はないのだが、
紐をつまんで本を開くと、
勢いでページを破いてしまいそうな気がするのだ。
単に僕が粗雑なだけだが。
で、そこらにある紙切れを挟んでおく。
或いは、パンフや愛読者ハガキが挟み込まれていれば、それをを使用する。
因みに、今回のような著者の取り計らいで送られてくる本には、
著者謹呈の短冊が挟まれている。
これが栞がわりに好都合なのである。
全く失礼な話だと思われるが、それがそうでもない。
その短冊を挟み直すたびに、僕なりに感謝の念が生じる。
僕が何かの弾みで、本を書くような非常事態が発生すれば、
氏には平積みできるほどの冊数を送ろう。

インターホンを鳴らして玄関口まで持ってきてくれればいいのにね」。
リビングに入った僕に、家内がゆうメールらしきものを手渡しながら言った。
発送元は徳間書店だった。
「徳間?版元さんやなあ。心当たりないで」
と、鼻をグスグスさせながら僕は言った。
封を開けてみると、渋い装丁の単行本が入っていた。
有栖川有栖さんの新刊だ。
デビュー以来、新刊が出る度に、きっちり送って下さる。
有り難さと共に恐縮する。
紛いなりにも、
ミステリーを読んでみようと思うようになったのは、
有栖川さんのお陰だ。
それまで、僕は海外ミステリーはおろか
日本の作家物でも、全くの門外漢だった。
こうして、読めるジャンルが増えた事は、喜ばしい。
送られてきた本のタイトルは「高原のフーダニット」。

「うまくなったなあ。褒めてやろう」
なんて、ぶつぶつ言いながら読んでいたら
「あのね、一行もまともに書けない人が
どなた様に向かってそんな無礼極まりないことが言えるの」
と、家内が呆れ顔で言った。
「僕に褒められると言うことは、それだけ実力派という事の証やがな」
と、本から目をそらさずに僕は言った。
「1冊でも上梓して、世間様に認められてから、そういうこと言ったら」
そういい捨てて家内は台所に消えていった。
「本を書けるほどの文才があれば、とっくに作家になっているわさ・・・」
僕は、家内に聞こえないように小声で言った。
たまには、ご機嫌伺いをせねば・・・
ところで、僕にはおかしなクセがある。
単行本の多くには、紐のスピンがついている。
紐栞といえばいいのだろうか?
折角付いているのに、僕はこれを使わない。
大層に考える事はないのだが、
紐をつまんで本を開くと、
勢いでページを破いてしまいそうな気がするのだ。
単に僕が粗雑なだけだが。
で、そこらにある紙切れを挟んでおく。
或いは、パンフや愛読者ハガキが挟み込まれていれば、それをを使用する。
因みに、今回のような著者の取り計らいで送られてくる本には、
著者謹呈の短冊が挟まれている。
これが栞がわりに好都合なのである。
全く失礼な話だと思われるが、それがそうでもない。
その短冊を挟み直すたびに、僕なりに感謝の念が生じる。
僕が何かの弾みで、本を書くような非常事態が発生すれば、
氏には平積みできるほどの冊数を送ろう。
