拳を握り、立ち上がれ! | レトロショップ成穂堂ケンの苦悩と爆笑の日々

拳を握り、立ち上がれ!

久しく連絡をとっていなかった知人から電話が入った。

今朝、連絡してみるか、と思っていた所だったので、驚いた。

暫く雑談をしたあと、

「あのなあ、店、閉めることにした」

と、知人がぽつりと言った。

僕は、電話の向こうで何が起こっているのか分からなかった。

只、かわいた空気がそこにあった。

「心配はない。今日は商売道具を整理をするのに、

ちょっと相談があって連絡をしてんわ」と。

一瞬沈黙があって、知人は懐かしそうに言った。

「昔は良かったよなあ」

「確かに」僕はそう呟いた。





善きにしても悪しきにしても、

かつて、日本中が浮かれていた時代があった。

みんなエネルギッシュで、はしゃいでいた。

タケノコのように、目新しい店がたち並び、

それなりに人で賑わった。

僕たちは大した悩みもなく、日々上機嫌だった。

滑稽にも、僕は、そんな時がいつまでも続くと思っていた。

あのバカ騒ぎは何だったのだろう?

そして、ある日を境に、様相が変わり始めた。

唐突に倒れ出しだドミノを見ても、

それは、たまたまだと思っていた。

それがどんどん広がっていっても、

僕はその連鎖の中にはいないと信じていた。

或いは、適当な所で、ストッパーが差し込まれるであろうと楽観していた。

だけど、それは意思を持たない機械の如く僕の所にもやってきた。

人の力の及ばない現実を見た気がした。

その時、僕は初めて商売の怖さを知った。


知人のその言葉を聞いた時

「どうしてもっと早く連絡をくれなかったのか!」

と、喉元まで言葉がでたが、

僕のような頼りなげな人間に何が出来るのだろう?と思った。

「分かった。兎に角、状況を見に行く」

という事で僕は、電話を切った。

生きている以上、なんとか生きていくしかない。

頼ったり、頼られたり、それでいいじゃないかと思う。

やがて、人はその落胆をバネにして、また立ち上がる。

拳を握り、「こんな所でくたばってたまるか」と

天を仰ぎ見る。