初夏の足音が雨になって街を走り出すころ、さりぴが風と共に去ってしまった。気がつけば3か月も過ぎている。加齢のせいか、時間が速く過ぎていく。フレンチ・フライ、オニオン・フライ、タイム・フライズ。「時間」を唐揚げに出来るなら食べてみたい。
6月13日、どうにも仕事を調整できず、卒業式には参加できなかった。職場で泣きそうになりながら、こっそりとツイキャス配信をみていた。屋内なのに頬が少し濡れた。雨漏りかもしれない。
4年半という月日は長い。だいたい高校生が大学を卒業して社会人になるくらい。それくらいの時間を、さりぴは御屋敷で過ごして、時が満ちた。
初めてさりぴを見たときの印象は「キレイな人だな、きっとモデルとかやってるんだろうな」だった。後からご本人にきくと、そんなことはない、という。曰く「ただの人見知りでオタク」だそうだ。たしかに容姿端麗なのにコメディエンヌといったほうが似合う、可笑しさや愛おしさを感じさせる人だった。いわゆるギャップ萌えである。
人それぞれだと思うが、ぼくにとって、さりぴはレアなメイドさんだった。御帰宅の時間帯があまり被らないこともあって、平均すると2か月に一度くらい会うことができて挨拶を交わす、またはイベント時に会えたらうれしい、そんなメイドさんだった。
だから、さりぴの為人(ひととなり)について詳しくは知らない。御屋敷の先輩方のほうがずっと詳しいのだと思う。とはいえ印象的な思い出はBDイベ、学園祭など、様々なところで記憶に残っている。御給仕の際には控えめに、しかし、愛らしさや可笑しさも忘れずに、という人だ。そう思うと、模範的なメイドさんの一人だったのかもしれない。清楚な見た目なのにコメディエンヌな味わいがある――実に関西らしい。忘れようにも忘れられないと思う。
昨日(2021/9/13)、さりぴの卒業から3か月後を迎えた。emaidの手焼きクッキーを割らずになんとか持ち帰り、今日の朝食に添えた。珈琲と一緒に、崩れる甘いほろほろとした優しさは、さりぴの思い出にふさわしい。空梅雨に流れていったあの日々は、優しい雨音のような、少し柔らかいクッキーのような記憶だ。
そして、さりぴの卒業は、ある旦那様の卒業の記憶とも繋がっている。そう、フランス人のピエールさんである。さりぴが卒業した後、約一週間後、ピエールさんも出発の日を迎えた。ピエールさんの日常は、彼のツイッターで知ることができる。フランスの風景を見られるので興味深い。https://twitter.com/Pierre_Pollux_G
さりぴへ。
気がつけば夏も過ぎかけて朝夕は冷えを感じるようになってきました。お変わりなくお元気にお過ごしでしょうか。この三か月、良いこと、楽しいことはありましたか。旦那様として過ごすemaidは相変わらずで、楽しくて良い時間を頂いています。夏の忙しさが片付いて、今朝、やっと卒業動画を拝見しました。久しぶりの動くさりぴは、やはりさりぴでした(当然)。
チェキも確認が終わって帰ってきました。あらためて「あぁ、卒業したんだなぁ」と時間差で感じています。チェキを受けとる多くの旦那様お嬢様も同じことを感じたと思います。あと、寄せ書きは受け取れましたか。一度、奥の6人掛けに寄せ書きが置いてあるのを見かけて、ちょっと笑ってしまいました。メイドの皆から「まだ書き足りない」と思われるメイドさんも中々いないのではないでしょうか。
遅くなりましたが、卒業おめでとうございました。もし偶然、同時に御帰宅したら思わず手を振ってしまうかもしれません。その時はご容赦ください。首を振られると少し悲しいです。
さりぴと御屋敷でたまに会って交わす会話の時間が好きでした。本当にありがとうございました。さく君にもよろしくお伝えください。さりぴの今後の歩みの祝福を心から祈ります、父と子と聖霊の御名によって。元メイド・さりぴのこれからの旅路に幸多からんことを。
長寿と繁栄を、お気をつけていってらっしゃいませ。
さむ 拝