メイドたちの記憶18. 2Days 終わりが見える果てにはじまりが | さむの御帰宅日記

さむの御帰宅日記

ネットの海の枯れ珊瑚のあぶく

 

 コンクリートを濡らし流れる雨音、しずくに跳ねる街の曇った光が少しだけサイバーパンクな現実を照らしている。明日、なんとか御帰宅するためにカプセルホテルをとった。午後から京都である研究会に出席せねばならないのだ。もっと言えば、2020年以降は来ないであろう観光客に合わせて変わりゆく街の現実を知るためにも、カプセルホテルに一度泊まってみたかった。ちょうどポイントがたまっていたので、1500円程度で、横になってシャワー浴びれるならば、悪くないディールであろう。

 

 いよいよ、あと二日である。

 

5月17日 木曜日

 

 自宅に戻ってのち、御帰宅日記を書いて、朝5時半くらいまでかけて申請書を書き上げた。徹夜である。もはや年齢的に徹夜するとつらい。吐きそう…。明け方の空は雲多く、同じく徹夜で作業していた友人のツイッターが更新されていて、妙な親近感を覚えてしまった。

 

 寝て起きて11時。直前まで寝ていたかったのだが、目覚めてしまい、義務であるTA業務へ。留学生たちの院試のための準備クラスである。日本語で、当該分野の入門書を音読し、分からないところをきちんと読むためのクラスだが、少々不安のあった修士入学を目指す学生が、指定本を半分以上読んできているので、ちょっと驚きつつ、希望が持てた。外国語能力は、人によって発現順序が違う。読み書き、聞く話すのどれが最初にくるのかを教授側が把握しなければよい指導とならない。少なくとも、読むのは相当に得意なようである。

 

 仕事も終えたので、原稿を片付けようと御帰宅。が、さすがに徹夜が効いたのか、もはやあまり頭も動かない。ただ畏友が、今日が最後になるということで、ともにテーブルに座れたのは何よりもうれしいことだった。また、隣にたまたま座った人がガルシア・マルケス「百年の孤独」を読んでいたので思わず話しかけてしまった。

 

 そして、以前、伝手があって履歴書を送った某社より電話があった。昨日、ものすごくよい発見をしたところである。そして、御屋敷という場所を失うにせよ、これから色々と面白いことを考えているのだ。なぜ、いまこのタイミングで…と思うが、ちょっと断らざるを得ない。無念であるが、しかたなし。

 

 なんというか、あくまで僕の身に関しての話であるが、ヴィランジュにいるときに、ぼくの人生は動く。重要な出来事や選択の背景に、いつも御屋敷があった。ここがなければ、なかったものが、たくさんあるのだ。有限であることは、価値の喪失ではなく、存在したことそのものが価値であるのだ。感謝に堪えない。畏友のオムライスに書かれた「愛してくれてありがとう」という言葉が胸に響いた。

 

 御屋敷仲間がオーナーに頼んで入れてもらったという、この格別にうまい抹茶ソフトも食べ収めである。ほろ苦さと甘さは、生涯忘れえぬ味となるだろう。

 

 帰宅後、疲れていたので、早めに横になり、結局3時くらいには寝た。  

 

 

5月18日 金曜日

 

 さすがに疲れていたのか、連続で8時間くらい眠り、起きてからも昼過ぎまで横になったままスマホを見ていた。本日は、翻訳の下読みと原稿の最終調整である。行きしなスマホで作業。御帰宅後、作業をしようと思っていたら、東京へ仕事へ行く前の畏友が、再度、御帰宅しているという。彼と出会えたのも、ここがあってこそである。チェキを撮って、出ていく畏友と握手をし、彼の背中を見送った。

 

 それと明日明後日は頼めないだろうから、SP珈琲を頼んだ。淹れてくれたのは、みなとさんである。御屋敷で最初に頼んだSPを淹れてくれたのも彼女であり、最後も彼女となった。有難いことであり、きっと忘れないだろう。マグも、明日明後日には持って帰るということになるのだろうか。

 

 その後、ネット仲間が御帰宅すると聞いていたので、それまでは本日の寝床で作業でもしようと思っていたが、常連たちと同席することになった。それぞれに別れを惜しみつつ、よい時間を過ごし、ネット仲間氏とゴジラを観にいき、再び御帰宅してカレーを食べた。御屋敷仲間のT氏に相席をお願いし、座ることもできたので良かった。

 

 そして、さりーさんが大ファンのぱすぽ☆が解散とのことである。トイレから戻ると彼女が泣いていたので、何事かと思ったが、いやはや、無常である。大好きな場所とグループを同時に失ってしまうのはさみしい限りであろう。心中察するばかりである。

 

 涙雨か、いよいよ雨が強くなる。この雨は、何を流して、どこへ行くのだろう。泣いても笑っても明日明後日で、閉館となる。しかし、御屋敷という場所があったからこそ始まった物語は、まだまだこれからの続くのだ。明日の準備を置いて、つい、これを書いてしまった。そろそろ資料を読まねばならない。