血相を変えて店に入ってきた彼。
彼の友人が手を挙げると、こちらに気づき、小走りで近づいてきた。
目が合うと、特に具合が悪そうではないのに気づいたようで、ほっとしたような表情を見せた。
優しい彼を無駄に心配させた気まずさで、思わず目をそらす。
それを知ってか知らずか、彼が席に着くと、友人は饒舌に話し始めた。
ご友人「おつかれー。飯食べた?」
彼「いや…仕事終わったら制服のまま速攻でこっち向かったから。今着てるのヒートテックだし」
ご友人「まじか。まぁそんな変な格好でもないじゃん。平気平気。あ、俺たちもうお腹いっぱいだから、良かったら残ったやつ食べてよ。あとここお前の奢りな」
彼「え、奢りかよー。まぁいいよ。いただきます」
ご友人「あ、あとマキちゃんからお前に話があるんだってよ?」
マキ「え、ちょっと…!」
彼「話?なにかな?」
マキ「えっ、えっと………めろは私のなので、めろって呼ばないでください(真顔)」
彼「えっ」
ご友人「なんか、その呼び方はマキちゃんだけらしいよ?」
彼「そうなんだ。じゃあ、めろんって呼ぶならいいかな?」
マキ「…それなら……」
ご友人「よかったじゃん、解決して。てか車で来たんだろ?途中まで送ってくれよ。全員」
彼「お前なー笑 まぁいいけど」
今までが嘘みたいに、話しやすい雰囲気になったご友人。彼と仲良いんだなぁ。
彼が友人と話してるところを見るのも初めてだ。仲良い男同士の会話ってこんな感じなのか。なんかいいなぁ。
気まずさは拭えないが、2人の会話を聞いていて、思わず笑みがこぼれた。
そうして、気づけばもうすぐ23時。
私も彼も、次の日は仕事だ。そろそろ帰らないと…。
ご友人「もうこんな時間かー。じゃあ帰ろうか」
全員「はーい」
有言実行。彼が本当にお金を払ってくれた。
このメンバーで誰よりも食べてない上に、飲み物も水だけだったのに…。
会計の間、マキに耳打ちされる。
マキ「LINEのアイコンと雰囲気全然違くない?もっとおっさんぽい感じだと思ってたのに。なんかチャラそう…」
私「アイコンは完全に黒髪だし、確かに実物と違うよね。パーマっぽい茶髪だし、チャラそうに見えるかもだけど、女友達も全然いないし、こんなことも報告する?ってくらい真面目だよ」
マキ「えー?」
会計を済ませると、駐車場に向かい、運転席に彼、助手席にご友人、後ろに私とマキが乗り込んで、まずは都内に住んでいる彼の友人を駅まで送る。
道中、車の話をしている前2人。
私は疎いから全く分からないけれど、高級車の話をしてるみたい。彼はあまり友人と遊ぶことはないらしいから、久々の再会なんだろうけど…。
それを感じさせないような、ナチュラルな空気感を出している。
こういうの、なんかいいなぁ。
彼の友人を降ろすと、次はマキの家の最寄駅へ。
居酒屋で飲んでたのもあって、尿意が私を襲う。
うっ、やばい…絶対私の家までは間に合わない…。
私「あの…途中どこかで、トイレ行きたいです」
彼「了解。じゃあ、途中でローソン通るみたいだから、そこ行こうか」
ローソンで一度降ろしてもらい、小走りでトイレに向かい、さっさと済ませて車に戻る。
車内に戻ると、特に普通の雰囲気。
険悪な感じにはなってなさそうかな?
私「ただいまー。ごめんね、帰り途中に。2人で何か話した?」
彼「めろんのどこが好きなのかと、好きなタイプを聞かれたよ」
マキ「めろんと一緒にいると楽しくて、癒されるから好きなんだって。好きなタイプは、目が大きい人らしいよ」
私「へー。初耳だなぁ。そういうの聞いたことなかったな」
マキ「めろは私のなんだからね。これからも遊ぶよね?」
私「当たり前でしょ!そもそも、彼は土日は休めないし。金曜夜とか、土日の休みはマキのだよ!」
マキ「やった!」
そうしてマキを降ろし、車内は2人に。
駅から離れたところで、一度車を止める。
彼「隣おいで」
私「うん…」
かなり心配させて来させた上に、お金払わされて車で送らせて…。いざ2人になると、気まずいなぁ…。
バツが悪い顔で、彼の隣に移動し、いつも通り手を繋ぎ、発進。
私「ごめんなさい…心配させて…」
彼「ううん、何もなさそうで安心したよ。どうしたの
?」
私「あのね…マキに見たいって言われて、LINE見せたんだけど、仲良さげな感じに嫉妬したみたいで…。"まじ無理"って、止める間もなく送られちゃって。消せばよかったんだけど、反応が見たくて、つい…。"めろダメ"って言うのは、"めろって呼んじゃダメ"って意味でうちが送ったの。誤解させてごめんなさい。疲れてるはずなのに、ここまで来させちゃって…」
彼「そうだったんだ。あまり、LINEは見せない方がいいかもね。俺はてっきり、お酒飲んで具合が悪くなったのかと思ったんだ。昨日も遅くまで俺といたし…。あんなの見せられたら、行かないわけにはいかないよ。何もないなら全然いいんだ」
私「そうだね。今までは普通に見せてたけど、こうなるなら見せない方がいいよね。これからは断るよ。遅くまでいるのは、うちが会いたいからだし!いつも職場近くまで迎えに来てくれて、感謝してる。会うと癒されるんだよ。回復にしかならないよ」
彼「ありがとう。俺も、会うといつも癒される。今日は会えないなと思ってたんだけど、こうやって会えて嬉しい」
私「うちも。こんな形だけど、会えて嬉しい。今日は遅くなるの確定だったし、電話も難しいだろうなって思ってたから…」
彼「結果オーライだね笑 帰りがてら、少しドライブしようか?」
私「うん!」
優しい彼。怒るどころか、私に何もないならなんでもいいらしい。
着替える時間も惜しくて、着の身着のまま、車に乗り込んで来てくれた。
こんな人に、なんてことをしてしまったんだ…。
結局、明け方まで彼とドライブデートを楽しみ、帰路に着いた。