遅番の帰り。いつも通り、彼が迎えに来てくれた。
彼「おつかれ!今日は早かったね」
私「うん、今日は早く帰らないと終電間に合わない先輩がいたからね。10分早く切り上げたんだよー」
車に乗り込み、他愛もない話。
その時、ちょっとした話題のつもりで、職場近くのコンビニの男性店員の話をしてみた。
私「職場のすぐ近くにあるファミマにね、金髪で黒縁メガネの男性店員さんがいるんだけど、その人の接客がすごく良いんだよ!見た目はチャラそうだなって思ったんだけど、すごくにこやかで、感じがいいの。イケメンって思っちゃったよー」
彼「あぁ、俺も見たことあるけど…。あれがタイプなの?中の下じゃん」
私「え、そうかな?まぁ、整った顔してるかって言ったらそうじゃないかもしれないけど…」
ちょっと不機嫌になった彼。
「あんなの全然イケメンじゃないじゃん」「えー、そうかなー?」程度で終わると思っていたが、車を走らせながらも、ネチネチ言われた。
「あの程度の男ならゴロゴロいる」「めろん、趣味悪くない?」「ないわー」などなど…。
ここまで言われる?とカチンときた私。
私「じゃあ、どんな子が好みなのさー!」
彼「俺?言っとくけど、本当に可愛いからね。例えば…この子とか」(スマホでSNSを開き、検索機能で出てきた女性を見せてくる)
私「……………かわいい…」
SNSにあげる自撮りだし、加工もしてるとは思う。
それでも、その人は本当に可愛かった。
黒髪で色白、むっちりとした谷間が見えるトップスを着て、ぱっちりとした黒い目。ピンク色の舌が、口元から覗いている写真。
完敗だ…。
ここまで可愛い子が出てくるとは思わず、ショックを受ける私。
こんな可愛い子がタイプ?なんで私を選んだの?
胸もないし、こんな整った顔もしてないし…。
全力で好いてくれてると思ってたけど、自信喪失だ…。
私「私、完敗だね…。こんな子に敵わないや…」
落ち込む私に、彼が慰めるように説明してくれる。
彼「この子は、昔街コンで出会った子なんだ。渋谷のクラブでDJやってる子で。連絡先も交換したけど、俺なんて全然範囲外って感じで。近づいてきたのは、宣伝目的だったんだよ。今は結構人気出てて、メディアにも取り上げられたみたいだよ」
私「そうなんだ…」
この子は彼に興味がない。今は連絡先も残ってない。
SNSでもやりとりはしてなさそうだ。
でも、そういう問題じゃない。
私と会った時の街コンでは、私かA、29歳の女性の3択しかなくて、29歳の女性は参加人数が少なすぎてさっさと見切りをつけて帰っていった。
実質、私かAの2択みたいなもので。
引っ込み思案のAと、人見知りだけどなんだかんだおしゃべりな私。
私にアプローチしてきたのは、選択肢がなかったから。
もし参加した街コンで、こんな子がいたなら、私になんてアプローチしなかったんだろうな。
そう思って、悲しくなった。
分かってる。自分が絶世の美女ではないことくらい。
自分より可愛い子なんていっぱいいて、たまたまタイミングが合ったから、私を選んでくれただけ。
このDJの子も可愛いけど、もし他にも可愛い子を集めたら、彼は別の子にアタックしていたかもしれない。
彼だってイケメンなわけじゃない。
可愛い子にアタックしても、全然相手にされなかった。
彼のレベルなら、私が妥当で、しっくりくる。
フィーリングも合うし、一緒にいて居心地がいい。それでいいじゃないか。
そうだよなぁ、彼、最初から言ってたもんなぁ。
男は顔で女を選びがちなんだよって。
そりゃ可愛い子に彼氏がいない、今探してますって言われたら、付き合いたいって思うよね。
それでも、やっぱりショックで。
私「ショック…」
彼「それは俺のセリフだよ…」
私「なんだと、あの金髪店員より彼ちゃんの方が良いに決まってるでしょ!こっちは完璧に完敗な、美少女が好みだって見せられたんだよ!自信なくなるよ!」
彼「そんなの、俺だってめろんの方が一緒にいて楽しいし、良いに決まってるよ!けど、あんなブサイクが良いって言われて、ブス専なんだって思ったら、ショックだよ!」
私「ブス専!?失礼だな!だったら彼ちゃんもブサイクってことになるぞ!うちは彼ちゃんの顔も好きだからね!」
彼「あんなのと一緒にされた!!!!」
車の中で落ち込んだり、ギャーギャー言い合ったり。
落ち込んだのは一瞬で、すぐにいつも通りのノリに元通り。
彼と話していてショックを受けたのは初めてだった。
好きな人と好みのタイプについて話しても、何の得にもならないことが分かった。
反省…。