商店街が寂れてきたという話は、今や地方ではよく聞くようになった話だ。
少し離れた郊外に大きなショッピングモールを作ったり、中心街でも商店街の周辺に大きなデパートなどが参入したりといった動きが続くことで、商店街が時間と共に活力をなくしていった結果である。
私の住む宮崎県でも、イオンモールやニトリモールなどの大型商業施設が郊外に次々と作られる中で、中心街とされている宮崎駅近くの商店街は、以前よりも元気をなくしていっている。
そういった状況の中で、地域の人々によって、「もう一度商店街に活気を取り戻そう!」という具体的な取り組みが行われるようになったり、駅や商店街近くにも複合ビルを建設することで人を呼び戻そうという動きが出てきたりしている。
商店街はかつて、地域の人たちにとって大切なコミュニケーションの場であった。
そういった商店街の役割を再度見つめ直し、地域活性化の中心として考えようという動きが国からも出始めている。
そこで今回は、
1.「商店街」の現状
2.「商店街」に活気を取り戻すための取り組み
3.「商店街」に今後求められていること
以上の3点についてお話ししてみる。
1.「商店街」の現状
それではまず、「商店街」の今の実情を数字的に見てみる。
商店街の状況を知るのに一番分かりやすい指標は、「空き店舗の数」だろう。
そこで、下のグラフを見て頂きたい。
*参照:中小企業庁委託「平成24年版商店街実態調査報告書」(2012年11月、(株)アストジェイ)
空き店舗率は、一度改善を見せた時期もあるものの、その後は年々高まっていく一方であることがわかる。
先程、商店街に活力が失われていった理由として、「郊外での大型商業施設の存在」を挙げたが、ここ10年で急激に空き店舗率が上昇していることから、もう一つ考えられる理由が出てきた。
それは、「インターネットの普及によるネットショッピング活用の増加」である。
ここ10年の間に、ネットショッピングの仕組みは大幅に変化してきている。
今では、店舗に足を運ばずとも、ネット上で誰もが簡単に買い物が出来る時代である。
そういった背景から、商店街へ足を運ぶ人も急速に減少し、それに伴って空き店舗率も上昇したと考えられる。
そして、もうひとつの数字は、直近3年間(平成25年現在)で退店(廃業)した店舗の、退店(廃業)した理由についてである。
この数値を知ることで、商店街の今抱えている問題の別の面が見えてくる。
*参照:中小企業庁委託「平成24年版商店街実態調査報告書」(2012年11月、(株)アストジェイ)
上のグラフから分かるように、これまで話してきた内容とは裏腹に「大型点の進出」などよりも、断然「商店主の高齢化・後継者の不在」を理由とする店が多い。
つまり商店街の衰退は、外的要因だけに留まらず、内的要因も大きく影響していることが分かるのである。
2.「商店街」に活気を取り戻すための取り組み
ここまで話してきた通り、「商店街」は今、様々な面から問題を抱えている。
しかし、商店街に活気を取り戻すことが地域活性化への糸口になるとの考えから、公的機関と地域の両方で「商店街」への支援に力が注がれるようになってきているのだ。
そこで、その取り組みについていくつかご紹介したい。
国(経済産業省-中小企業庁)の取り組み
国としての大きな取り組みの1つとして、「地域・まちなか商業活性化支援事業(地域商業自立促進事業)」がある。
この事業は、「自立促進調査分析事業」と「自立促進支援事業」の2つに分類されているが、どちらにせよ、本事業の目的は、商店街等における「少子・高齢化」「地域交流」「新陳代謝」「構造改善」「外国人対応」「地域資源活用」の分野に関する新たな取組みを支援することにある。
この事業には、商店街組織(任意組織も含む)は当然のこと、まちづくり会社や特定非営利活動法人などの民間事業者も申請が出来る。
平成30年度の予算としては「16.3億円」という額で組まれており、補助する事業者もすでに採択されている。
*参照:「平成30年度予算「地域・まちなか商業活性化支援事業(地域商業自立促進事業)」の補助事業者を採択しました」(中小企業庁HP)
地域の取り組み
【大阪府大阪市 粉浜商店街】
◎神社と連携した賑わいを創出
・商店街の近くにある神社の例祭「初辰まつり」と共に「はったつ市」を実施
⇒参拝客に商店街への買い物を促す
・アーケード・カラー舗装などのハード面リニューアル
⇒改修工事により安全性の向上を図る
【鳥取県境港市 水木しげるロード周辺商店街】
◎「鬼太郎」の妖怪オブジェで観光スポット化
・「水木しげるロード」から、住民による「鬼太郎」「妖怪」をテーマとした新しいまちづくり
⇒水木しげる氏のファンをはじめとして、商店街を盛り上げる組織が多く結成される
・観光客の増加によって空き店舗が減少
⇒水木しげるロードにより多くの観光客が訪れるようになり「観光対応型店舗」が増加
*参照:「鳥取県境港市 水木しげるロード周辺商店街」(中小企業庁HP)
3.「商店街」に今後求められていること
商店街がまちづくりの中心になり得るということは誰もが分かっている。
ただ、その商店街を活性化させることに、今は大きな支援と労力が求められていることもまた事実である。
「買い物をする場所」は、今後いくらでも増やすことが出来る。
大型店が出来たり、人気店が参入したり、人を増やすための買い物施設は、今後も高いニーズがあることからなくなることはないであろう。
同時に、「買う」ということだけでいいのであれば、今ではインターネットがある。
どこにいようが、何時だろうが、自分の好きなタイミングで物を買う事が出来る。
返品可能な場合もほとんどであることから、以前は懸念されていた問題も、今ではほとんどがクリアになっている。
しかし、それでも「商店街」が地域活性化の中心として注目される理由は、「コミュニケーションの場」として期待されているからだ。
商店街にしか実現できない「人と人とのつながり」。
それが今後、活力を取り戻していくであろう商店街に最も求められている要素なのである。
地域づくりは難しい。
しかし、同志が一同に集える“場”があれば、これまでは出来なかったことが実現に近づく可能性も出てくる。
「商店街」は、地域活性化実現のための大きな要素になるだろう。