コンビニのレジに並んでいると、少年がしゃがんで駄菓子を選んでいるのが目に入った。
7.8歳くらいであろうか、熱心に端から端まで見ている。とても嬉しそうに。
「お待ちのお客様こちらのレジへどうぞ~」
会計を終えて店を出るとき、もう一度少年を見ると、選んだ駄菓子を見つめながらレジに向かっていた。
初めて「小遣い」を貰ったのはいつだっただろう?
すでに埃をかぶった記憶の中から、その一片を見つけた。
6歳の夏、「ボンタンアメ」が欲しくて母にねだっていた。
いつもなら母が買い物に同行する筈がその日は違った。
おもむろにがまぐちを広げ50円玉を一枚渡された。
母は明らかに怒っているようだ。何か言ってはいけない事でも言ったのだろう。
母の怒りに何か後ろめたい苦い気持ちがあったが、50円玉を握り締め駄菓子屋に走っていた。
あのオブラートに包まれたオレンジの甘い粒を思い浮かべると自然に笑顔になる。
初めて一人で買い物をする緊張感。
お金と引き換えに、手に入れた欲望のオレンジの粒。
家への帰り道、気にしない様にしていた後ろめたい気持ちが背中から襲ってきた。
母の顔を見ると、残念そうに「お帰り」と言って洗濯物を取り込んでいた。
なんだか益々バツが悪い。
「一緒に食べようよ、かあちゃん」
謝る事の出来ない残念な息子の横で、母は縁側に腰を降ろし一緒に食べてくれた。
あれ以来「ボンタンアメ」は食べれない。
あれから三十余年、日々の仕事に追われ家や車のために借金を作り
親孝行なんてした事は無く、欲望にまみれた生活を繰り返す残念な息子。
何も変わっちゃいねぇょ 安心してくれ かあちゃん