ptureのブログ

90年代初頭のシリーズ2作目。大丈夫、覚えてますよ。つよーいアウトロー刑事の話。今回の舞台はタイ。珍しい、海外だ。レアアース発掘を日本企業が行ってるけど、住民から健康被害というか子供の白血病が増えている、業務を停止しろという声が大きく上がる。実はその企業は日本の暴力団のフロント。というわけで人を殺めることすら気にもとめない最悪ヤクザが鎮圧にやってくる。そして住民に対して大暴れ。ひでえ。そこに佐伯登場とここまではいいんだけど、ヤクザ待ち受けたのに、暴れてる間も手をださないで、あとから茫然自失に悔しがる。いや、なんだこれ。この間はいらなかったし、ものすごいストレスたまった。意味がわからんかったよ。でも結局は餓狼伝のごとく立ち回り、溜飲を下げることに成功したのでした。にしても、若々しい日本を見てる感じが止まらない。若くて汚くて、下品とも思えてしまうような。おもしろかった。 

4作目。そしてあとがきをみると、これが最終巻だったようだけど、続巻あるので結局続けたってこと。ちょっと前回から空いちゃったか。とっとと読もうと決めたことをすっかり忘れてたみたい。今回は旅人に何が起きたのか、旅人にひどいことをしたやつの正体、そして動機、ていちゃんの正体は?旅人と陽子先生の行く末は?全部きれいサッパリと明らかになる。でも気持ちよさよりもやるせなさが勝つ。旅人の人生が悲しいから。両親の復讐のためだけに生きる、それも四感を失うという異常な状態、最後の一感の視力もいつ失うかわからない。そんな旅人だから、陽子先生、ていちゃんとのささやかながら幸せな時間がこの巻でおわることなく、もう少し続くことがうれしい。おもしろかった。 

夢を叶える象の作家さん。解雇されて実家に戻った男性。その街で数十年ぶりに小学生の時の友人に会う。彼は主人公もしるちょっと変わった祖父が昔してくれた話を、元気が出ればということで主人公に語る。そのお話は4つ。いずれの話も、こう考えてご覧よ、あるいはこういう観点で見直したらどうだろうみたいな感じ。それでハッピーな世界が見えないか、がんばれないかって語りかける。正直、ちょっとうざいかな。物語自体はユニークな発想で、へー、よくこんなシチュを思いつくな、一番幸せなヒト大会だとか、死霊向けの学校だとか、溶けるのを待つ氷の熊の親子だとか。ストーリーテラーのみだったほうが俺的には好みかしら。楽しみました。 

千葉に住む年収300万円くらいの30歳女性が主人公。初っ端から延々財テク、それも株売買の話が続く。将来の貯蓄のために今はとことん切り詰めての生活。お金が溜まっていく様は他人事ではあるけれど、なんか楽しいぞ。一方で段々主人公も気づくんだけど、果たして、これでいいんだろうか。今、使わなければいけない、使うべきなお金だってあるんじゃないかって。そうそう。一方で恋人の男性はまるで正反対で欲しいものは躊躇なく計画性なく買うタイプだな。そんな二人がつきあえるもんだろうかねえ。中盤からいきなりストーリーが始まる感じ。この恋人が新興宗教的な団体に入り浸ってしまう。そこから連れ出すために主人公さん、240万円もの大金で元傭兵さんを雇い、彼を助け出しにいく。その組織が今までは楽しけりゃそれでいいじゃんだったのが、最近みんなの前で自己批判をするような形になったから。70年代っぽくきな臭くなったわけだ。ストーリーの突飛さは好きな感じ。でもキャラへの共感があまりわかなかったかな。楽しみました。 

4作目。今までから少し新展開かなって。とその前にエンマ様の知識をキャバクラで使って虚実判断しつつ女の子を叱る西野、うぜえ。そんなにキャバクラにいりびたってるのか。 新しい知識というか区分方法がいきなりでてきた。シェルドンの体格類型論だって。中肉中背ならこんな性格とか。ガリガリは陰気とか。さすがにこれって傾向はあったとしても、あまり役にたたないんじゃないか。 

1話目の薬物中毒で死んだミュージシャンの事件のアリバイトリックが目から鱗だよ。お見事だよ。しかもなんともさりげなく。2話目はまさにゲスの極み。これって性癖だよな。脳性麻痺で車椅子生活、そして知的障害の女の子を求めていたって。ぞっとする。3話目は公園で仲間のリンチを受けて死んだ女子中学生の事件。これは20歳の男をトップに、高校生の男子、中学生の女子3人のグループで起きたことだけど、このグループの組み合わせもありえないよな。お山の大将もここに極まれリだな。でも暴走族とかそういう感じ?4話目はシリーズで初めてのバイオレンス。大脳扁桃体切除という洗脳手術ってのが怖い。感情そのままに、何でも簡単に信じ、恐怖を感じなくなる。これなら自爆もできるな。って、おいおい、ページ足りるのか、よかった、足りた、完結してくれたと喜ぶ。うまいじゃないか。ああ、おもしろかった。 

著者名がないんだけど、江戸時代あるいはもっと過去の書籍がふんだんに参照されていて、内容濃い。そしていい加減なところがない。一つの話題からふわっと次の知識的内容が披露されるんだけど、そのあたりも自然に繋がってる。なんか上質な授業を受けてるみたい。 

現代金額換算での気づき。一両でコメ1石150kgが買えた。今なら10kg4000円位で買えるから一両は6万円程度、つまり一文は10円くらいとある。最近はコメは倍になってるから、江戸時代の貨幣価値はこの記載の倍だなあ。となると昼食や休憩のお茶代は35-50文らしいので、今だと700-1000円くらいになる。おお、今の感覚と一緒じゃないか。当時はグルメ本というか、土地土地のうまいものの紹介本やらもあったとのこと。日本人変わらんなあ。そして世界的にみても、当時の日本人は旅行好きだったらしい。親近感でまくりだ。もちろん、すべてが歩きだし、そのため荷物は可能な限り絞り込むあたりが今と違うところだよな。片道歩いて12-13日。しかも今よりも歩きにくい格好で、かつ今よりも歩きにくい道を。大変なれど、なんか夢があるよなあ。おもしろかった。 

「無国籍で摩訶不思議 華麗でクレイジーな変奏曲集」という案内文につられて。前半は童話が少し入った感じの現実はまだ近くにあるような話だったり、これは、ほぼ詩だなと思うような幻想的なものがあったりで、少し趣味とは違うかなあと。でも中盤以降から、いい感じになってきた。とある兄弟妹。知らない言葉をきくと、そこからイメージしたものが具現化してしまう。テトロドトキシンと聞いたら…ごくらくとんぼときいたら…こういう発想、よくできるな。当選者になった人を殺すと賞金が手に入る。当選案内がくるのは本人のみだけど、なんとなく周りにわかってしまう。恐怖。永井豪的だな。大好き。ただひたすら永遠に走り続ける巨大な列車。その中で衰退し消滅した国家。おお、これ最高だ。設定がぶっとんでいながら、ヒトという生き物を正確に写し出してる。毎日すごろくのこまのようになって、部屋の移動を指示される少女たち。その理由はなんなんだろうか。日常の世界、生活がどういうわけかミュージカルになってる主人公。出社するにも、楽団員が走って後を追うっていうバカバカしさが最高。おやま、終わっちゃった。なんだ、満足じゃんか。しかし、これだけ多方向に話を向けるとは、この作家すげえな。おもしろかった。 

このミス受賞系。学園にただ一人の絶体的権力者ユリコ様。ユリコの名を持つ女子生徒のみがその地位につくことができる。毎年ユリコの名を持つ新入生を含めて誰かがユリコ様になる。それは選挙や当事者同士の争いというわけではない。自然と淘汰されて決定する。ユリコ様になれなかった候補者たちは怪我をしたり、時にはスキャンダルで転校したり、怖くなって退学したり。この怪異に巻き込まれる主人公と、そんな怪異は存在しない、絶対に裏があると主人公の友人のお話。シチュはばっちりでなかなかおどろおどろしい。ユリコ様を崇め奉る謎の会やら、その昔に実在した初代ユリコ様の日記だとか凝ってるねえ。そして候補者たちがこれまではなかったのにあいついて死んでいく。お、いよいよ怪異かと思いきや、きっちり謎解き。一気に読ませてはくれるけど、そもそも学園の権力者って、そんな力ほしいか?誰もが逆らわないって言っても所詮は高校生だしなあ。そのへんが腹落ちしてたらもっと没頭できたかもなあ。ちと残念。楽しみました。 

日本全国の博物館を訪れてのエッセー。趣味ど真ん中じゃん。うれしいねえ。そしてまあ、どこに行っても好奇心丸出しでテンションMAX。ただ見るだけじゃなくて、そこで働いている人たちを取材し、閲覧だけでは得られない知識も伝えてくれる。いいなあ。実にその数10。奇石、仏教、メガネ、ボタン、秘宝、炭鉱、火砕流、漫画、紙、そして人類の発生はカハク。ええ、カハクに原人系の展示あったのか。覚えてない。俄然行きたくなる。仏教の龍谷ミュージアムは戦前に探検隊を組織しての収集とか知らないことはまだまだたくさんあるな。メガネは作らんでもいいな。災害にあった施設、災害を後に残すための施設。そういう比較ができたのも新鮮だよ。なんだろう、どのエピソードも素敵だ。やっぱ、この作家、うまいんだよなあ。ああ、おもしろかった。 

おー。昭和のエログロホラーを彷彿とさせるじゃないか。慶応大学みたいな大学のウィンドサーフィン・サークル。サークルというか大学ではエスカレータではない学生はアウトサイダーと呼ばれ、見えないヒエラルキーみたいのがある。そのサークルに入部した一年生がコンパで鮭を飲まされ死ぬ。一緒に飲んでいたサークル仲間は彼を海に落とす。飲ませすぎて死なせるってことになれば、自分たちは社会的に排除されちゃうから。そして一年。死んだ学生の一周忌に、呼ばれ、メンバー8人は田舎の山深くにある寺を訪れる。そこからは能面をかぶった白装束が一人ひとり学生たちを惨殺していくというお話。そしてそれは津山三十人殺しが見え隠れ。現実味のない惨殺風景。スパっと首が飛んだり、両足首切られたり、血はブッシャーだし。ただ、どんどん疑心暗鬼になり、追い込まれていく雰囲気を最高潮にだしたかったのかもしれないけど、疑いがしつっこい。何度も同じ文句を吐いたりして。ちょっとそのあたりはくどかったのが残念。死んだあとに海に落としても溺死にはなんないところ、無視しちゃうのかと思ったら、一応汲んでありました。でも、楽しみました。