今週の木曜日、Legalの授業の一環で、シドニーの中心部にあるDowning Centerという裁判所の傍聴に行きました。

 

最初は、裁判官や弁護士さんたちが着ている

黒い上着や、頭に乗っかっているグレーのカツラの異様さに目が行きましたよ。

 

男性だけじゃなく、

女性も・・・マジかよ。

 

ご想像のとおり、弁護士さんや記録係の方たちって、

よくある学級委員タイプのルックス。

 

ややキツメな表情のメガネ女子が黒髪ロングヘアの上に、

このグレーかつらをぽっこり乗せてたりするので、

それ、ギャグじゃなくて?!

 

で、ともかく人がやたら出入りするので、同じ場所でいくつかの案件が行われている様子。

専門用語もあってか、うまく英語が聞き取れません。

 

急に場が変わったのが、

右手のドアが開いたとき。

 

突如、シーンと場が静まりかえる。

 

 

 

男女2人の警察官のような服装の係員に連れられて入ってきた男性

 

思わず息を飲んでしまうほど

・・・・気配が違う。

 

オーラというか、

 

彼を包む周囲だけが

まるで異世界のように感じる。

 

圧倒的な空気感。

 

どんな芝居でも見たことない、

本物って、

これなんだって圧倒される。

 

ダークグリーンのビロードっぽい素材のスウェットのような上下を着て。

 

顔は、すごく青白い。

白人さんだから、という以上に幽霊のような白さ。

 

手錠はされていないけれど、ずっと

ギューッとこぶしのように手を握りしめたままだった。

 

ときどき、ウッ・・・と反応をするけれど、

動物のようで言葉にならない。

 

弁護士さんらしき人たちの短いやりとりの後で、

 

裁判長から長い長いスピーチがありました。

 

彼のバックグラウンドが語られる。

 

お母さんが、まだ彼が若いうちに亡くなり、

父親もすでにいなかったか、天涯孤独になる。

気持ちをまぎらわすため、薬物にハマってしまう。

 

家に盗みに入り、お店で万引きをして

生きてきた暮らしぶり。

 

精神病を患い、コミニュティセンターでもサポートしたけれど、

度々事件を起こし、

 

不幸なバックグラウンドを鑑みても

罪はゆるされないということ。

 

30分近くも続いたでしょうか。

たぶん判決文だったのでしょう。

 

最後に彼に立ち上がるよう促し、

スピーチは終わりました。

 

刑がどう決まったのか聞きたかったけれど、聞き取れなかった。

冒頭だったのかもしれない。

 

二人の弁護士さんが、「了解する」といったような返事をして、彼も同意。

 

彼は薬物や精神病のためでしょうか、

心ここに在らずという感じでした。

 

目がうつろで、

自分のことの裁判なのに、

何が進んでいるのかわかっていないような印象。

 

不幸が重なって。

それでもお腹はすくし、

助けてくれる人もいなくて。

ケモノのように生きるしかなかったのかもしれない。

 

おどおどした動作。

本当は、気が小さくて従順な人のように思えた。

 

なにかのキッカケがあったら、

もっと違う人生を送れていたかもしれない、と強く思う。

 

2人の監視官に促されて、

元の扉から退廷する彼。

 

彼がいる空間と、いない空間は違う色がする。

 

ともかく違う次元の空間

そこだけポッカリとあるような。

 

彼のこれまでの人生の重さの一端が

ジワリと伝わってきたような時間でした。