311東日本大震災からもうすぐ2年を迎えます。
発生後すぐから、Niftyで連載したシリーズ(12回)を転載します。

PTSDを全体的に知りたい方は、こちらをどうぞ。
スライドシェア「PTSDのしくみから快復法まで」約1500views
http://www.slideshare.net/eikomomose/ptsd-14361340

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$百世安里のPTSD、トラウマのケア

震災から3ヵ月が過ぎ、仮設住宅へ移住された方もいらっしゃることでしょう。
実はこれからが、PTSDの症状が出やすい時期なのです。

理由の一つは、大勢の仲間との共同生活では、
プライバシーは欠けますが、話をすることで共感し合える利点があります。
これが個別の住宅に移り、孤独がPTSDの引き金になるのです。
もう一つは、PTSDは環境が落ち着いてから出てきやすいものだからです。

PTSDとは、危機や危険に襲われたために起きる精神症状。
危機や危険に直面している間は、自分の身を守ることで精一杯なんですね。
そのため、怒りや悲しみを感じるスキがありません。

その後、危険が去って安全な状態になると、心に余裕ができ、
突然、心の底からこれまで後回しにされてきた悲しみや怒りがドーっとあふれてきます。

そうなんです。PTSDには時差があるのです。

これを「怒りは、恐怖のフタがとれたあとに出てくる」という表現もあります。
つまり、安全になるまで、本来の感情はフタをされて、表に出てくることがありません。
そのため、人によっては数ヶ月後~半年後から症状が現れるといったことも珍しくないのです。

たとえば、いじめにあったお子さんたちに話を聞くと、
クラス替えでいじめっ子と離れることができたり、転校して安全な学校に移ったり、危険な状態が去ったとき、どうにもならない怒りがわき上がってきたと言います。
そして、新しいクラスメートにイライラとした口調で当たったり、ケンカをしてしまったり。

「せっかく良い環境になったのに、今度は自分から問題を起こすなんてどうして?」と、親や周囲は驚きます。
しかし、いじめられている最中は、いかに自分の身を守るかで精一杯だったのです。

ここで「自分がされて嫌だったことを人にしてはダメ」と、正論を押し付けてはいけません。
なぜなら、PTSDによってわき上がってくる感情は、本人ですらコントロールできないもの。
心の中に溜まったツライ出来事への理不尽さ、悔しさ、悲しさ、それを吐き出すことが大切です。

前回(心のケア(4)-対処の方法は?)、絵を描くアートセラピーをご紹介しましたが、
武道やスポーツで体を動かす、大声で歌うことなどで発散するのもいいでしょう。
また、演劇も傷ついたお子さんに向いているようです。
現実とは違う世界の人物になりきって、声を出し、体を動かすことが、
吐き出しだけでなく、心の解放につながります。

PTSDの時差という特性から、何ヶ月も経ってお子さんたちが地震や津波のことを話たり、怖がったりすることがあります。
そんなとき「いつまでもそんなこと考えてはダメ」と制止しないでください。
「話をしてはいけないことなんだ」と感じると、子どもたちは心の奥底に閉じ込めてしまいます。すると、吐き出しも行わなくなり、トラウマ(心のキズ)が残りやすいのです。

フラッシュバックや心のトラウマは数年間、
起きた出来事は一生心の隅に残っていきます。


忘れられなくていい。思い出しても怖くないように、
起きたことを、痛みが伴わないようにしていきましょう。

「そうか、ランドセルがなくなって悲しかったんだね」と、言いたいことを受け入れて、
「そうだね。いっぱい揺れて怖かったね」と、同調し、同意してあげてください。

いつでも話をしてもいいんだとわかると、お子さんは安心します。それは、自分の気持ちを受け入れてもらえるんだという信頼になるからです。

喪失しても、それを周囲が受け止めてくれる、
理解をしてくれる、力になってくれる。
・・・それが快復の力に
なっていきます。

そしてそれは、大人も同じだということをどうぞ忘れないでください。
あなた自身のお気持ちも、周囲の方に話してみてくださいね。
全員ではなくとも、耳を貸してくれる人、力になってくれる人がきっといます。
こんな時ですもの、大人も甘えて気持ちをラクにしましょうよ。

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★ネット記事「あなたの隣にある、いじめ」【TRAPRO関連記事】
http://www.trapro.jp/articles/176/

★3月24日(日)15:30~18:30
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