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[粒子線治療][陽子線治療][菱川良夫] 名誉センター長のこばなし ~がんから学ぶこと~

一般社団法人 メディポリス医学研究所
メディポリス国際陽子線治療センター 名誉センター長
菱川良夫による講演からの小話。

先日、女性の患者さんが、セカンドオピニオンを受けにセンターにいらっしゃいました。

彼女は4年前に肺がんの手術を受けていました。

手術前のレントゲン画像で認められた陰影は4つ。

そのうち、大きなもの2つを手術で摘出しました。
その後の病理検査で、1つからがん細胞が検出されたそうです。

他の2つは、小さかったこともあり経過を観察することになり、
4年経った今でも、大きな変化は認められていません。


彼女は四国から来ていました。
遠く四国から、わざわざ指宿まで来た理由を聞いてみると、


「主治医の先生から『様子を見ている2つは、いつか必ず大きくなる。その時は手術か放射線治療を…』と説明されています。

しかし、手術はもう二度とごめんです。

粒子線治療というものを知ってから、身近な周りの先生に粒子線治療について質問してみたところ、肯定的な先生と否定的な先生がいました。

色々な意見がありましたが、最後は自分自身で確かめたくて、ここまでやって来ました」


とのこと。


彼女が持参したレントゲン画像を見ると、確かに小さな2つの陰影があり、以前のそれとは変化が認められませんでした。


以下、私の回答です。

1)2つの陰影は変化していないので、このまま様子を見ることが大切です。

2)「悪くなる」と断言する医師の言葉は、忘れて下さい。
  しかし、経過を見ることは非常に大切です。

3)もし大きくなることがあれば、粒子線治療も可能です。
  治療方法として考えて下さい。



それにしても、彼女の行動力には驚かされました。

「どうしてこんなに行動力があるのですか?」と質問したところ、

「35年前に難治の感染症に侵された時、最初の医師の治療方法に納得することが出来ず、自分自身で色々と調べました。そして遠方の専門家に相談したところ完治したんです」

とのこと。

過去の成功体験から、行動することの大切さを学んだというわけでした。




がんの治療は、近代医学の大きな課題です。
そのため、数多くの治療法が確立され、患者さんの選択肢も増えました。

しかし、これにより「どの治療を選べば良いのか」と悩む人は多いようです。


がん治療の選択については、第91回のこばなしで書きましたので参考にして下さい。

第91回 がんの治療方法を選択する為に知っておきたいこと
http://ameblo.jp/ptrc/entry-11515978190.html




自分の身体は自分のもの。

自分が最も納得する治療方法を選ぶことが大切です。

セカンドオピニオンは、自分自身が最も納得出来る方法を見つけることが出来る最大の権利です。


医師に気を遣う前に、セカンドオピニオンを利用して下さい。

あなたの身体は、あなたが守るのです。
「粒子線治療で大切なことは何ですか?」

先日、医療雑誌の取材を受けた際、このように問われましたので、以下のように回答しました。

1)機械がちゃんと動くこと

2)チーム力

3)丁寧な治療




一つ一つ解説します。

1)機械がちゃんと動くこと

陽子線を用いて行う治療の為、これは欠かせません。

機械と言うと、陽子線発生・照射装置に目がいきがちですが、CT、MRIなどの診断装置、診断を元に正確な治療計画をたてるコンピュータ、各部門間で様々な情報が共有されている電子カルテシステムなど、何一つ欠かすことが出来ません。

余談ですが、装置には高額な維持管理・保守費用が必要です。



2)チーム力

陽子線治療を行う方針は、医師が決定します。

その決定に従い、医学物理士や放射線技師が最良の治療計画を作成します。
その計画に基づき、実際の治療を技師が行い、治療中に生じた副作用などに対するケアを看護師が行っています。

それ以外にも、薬剤師や事務、医療秘書、看護助手、栄養士、保育士などがセンターを支えています。

センター発足から、我々のチーム力の向上は目を見張るものがあります。

チーム力が向上することで、いままで適応が見送られていた症例(高度な技術が必要な症例)も受け入れることが出来ます。

適応症例の幅に関しては、以下のこばなしをご覧下さい。

第118回 粒子線治療施設を立ち上げる方々へのアドバイス
http://ameblo.jp/ptrc/entry-11655231250.html (「アドバイス3」参照)



3) 丁寧な治療

「あらゆることを丁寧に」これは日本人の特性です。
建設現場や町工場の仕事にも、他の国には見られない丁寧さが見られます。

医療現場でも、この特性を生かさない手はありません。


また現状に満足することなく、我々は常に目を光らせカイゼンを行っています。
カイゼンによって、より丁寧な治療が可能となります。




ポイントは書ききれないほどありますが、3つ挙げるとすればこのようになります。
「幸せな医療の提供」を実現する為に、一歩ずつ確実に歩を進めて参ります。
先日、セカンドオピニオンを受けにこられた患者さんと奥様から質問を受けました。
質問は1時間以上にも及び、その内容は「治療方法の違い」「効果」「副作用」「予後」「代替療法」など、多岐にわたるものでした。


病気や病状について理解ができていることを確認した上で、1つ1つ回答しましたが、
医療関係者ではないにもかかわらず、あまりにも がん について詳しいので驚きました。


「どのように勉強されたのですか?」と質問したところ、
「がんと診断されてから今まで(約2ヶ月半)の間に40冊の本を読みました」と答えられました。


患者さんは教育者で、今の時期は受験で忙しいそうです。

幸い、他の治療を先行すれば、受験が終わり時間が出来てから粒子線治療を開始しても問題がないであろうことを説明し、その方法を勧めました。


しかし、あまりにも勉強をされている為、治療後の再発や転移のこともよくご存知で、
しきりにそのことを心配されていました。


「まだ治療をしていないのに...」と思い、いつものように苦言を呈そうと思いましたが、その時はっと思いつき、以下のように説明しました。


受験勉強をしている、生徒さんにはどのようにお話ししますか?
『頑張って合格しよう!』と声をかけていませんか?

もちろん、生徒さんの方も合格を信じて一生懸命勉強していることでしょう。

がんの治療も全く同じです。
治療前や治療中は、『受けている治療で治る!』と強く思うことが一番大切なのです。

治療をする前から、上手くいかないことを考えるのは、間違っています。


また、仕方のないことですが、合格できなかった生徒さんも必ず出てきますね。
彼らには、その時点でアドバイスするでしょう?

受験前から、落ちた時の話をしますか?

がんの治療も全く同じです


こう話すと、お二人とも大変納得された様子でした。


このように説明をしたのは今回が初めてです。

自らの病気に対してしっかりと勉強されている教育者との出逢いで、
新たな切り口の説明に気づくことが出来ました。


幸せな医療の提供は、それぞれの立場にあった説明をすることから始まります。

これからも、より分かりやすい説明を心がけ、南九州から世界に向けて幸せな医療を提供していきたいと思っています。
日本の医師は、自分の知らないこと(治療)に対してネガティブな発言をしがち」
こう発言したのは、アメリカで二十数年仕事をされていた日本人医師です。


アメリカでは、患者さんが主治医に対して、『主治医の専門外の治療(主治医の知らない治療)を受けたい』と相談すると、

「その治療は専門ではないので、専門家に相談に行き、よく話を聞いてきて下さい。その話を理解できなければ、私の知る範囲でアドバイスをします。治療後は、また私が経過を観察することも可能なので安心して下さい」と言われるそうです。

このように、アメリカの医師の多くは患者さんの立場で病気に向き合っているようです。


一方、日本の医師はと言うと...

自分のちっぽけなプライドを傷つけないよう、自分の知らない医療に対してネガティブな発言をし、患者さんがその治療を選択しないように誘導する人がいます。


どうしてこのような違いが出るのでしょうか。

それは アメリカや他の国では、患者さんが医師や病院を評価し、選ぶからだそうです。


この話を聞いた時、以前そのようなことをこばなしに書いたことを思い出しました。

第93回 患者さんが病院を選び、医師を選ぶ時代
http://ameblo.jp/ptrc/entry-11524862229.html


「粒子線治療は治療後のガイドラインが整っていないから、そのような治療を受けた患者さんを診たくない」
日本では、こう言う医師や病院が いまだ少なくありません。

しかし、海外ではそのようなことはほとんどありません。
何故なら、そのようなことをしていたら、患者さんが誰も来なくなってしまうからです。


前述したアメリカ在住の長かった医師に、「どうしてこのようになったのか」と聞いたところ、

医師として一番大切なことは、人間としての「優しさ」です。
これを、日本できっちりと教育してこなかったからだと断言されました。


患者さんに対して優しい医師へ。

私も先輩医師として、これからを担う若い医師に、今以上にこれを教えていきたいと思っています。
「与えられた仕事をすれば、それで良い」
仕事に対して そう考える若者が多くなったように感じます。


会社(病院)で新人を採用した後、それぞれの能力に応じた仕事を与えます。
その仕事をルーチンの仕事としましょう。

すると彼らの中からは、
「給料はルーチンの仕事でもらっているのだから、ルーチン以外はしません」という者が現れます。
そのような若者の顔を覗いてみると、暗く、楽しそうではありません。


一方、ルーチンの仕事に慣れると、周りの人の仕事を手伝ったり、自分で新しいことを企画する若者もいます。
そのような若者の顔は、とても明るく、活き活きして楽しそうです。

このような元気な若者を見ていると、こちらも楽しくなります。
また、こちらのアドバイスにも素直に耳を傾け、驚くほど伸びて行くのが特長です。



この考え方に、学歴は関係ありません。

むしろ、高学歴の人にこそ「給料=ルーチンの仕事」と思い込んでいる人が多いのかもしれません。

彼らの思考がそう至るのは、能力の高い彼らに与えられた仕事が、能力を大きく下回る簡単な仕事であった場合に多いようです。

そういった場合、想定より早く簡単に仕事を片付けてしまいます。

その後、先輩や周りの人の仕事を手伝えば良いのですが...
自分と他人の学歴を比較することで、劣った者を馬鹿にするような思いが心の何処かに起こり、手伝うことができなくなるのです。


一度きりの人生、上司から与えられたルーチンの仕事だけを行っていても楽しくありません。
それは、上司にコントロールされた生き方だからです。

人生を楽しむ為には、自主的に他人の仕事を手伝ったり、自己研鑽やボランタリーをすることで、周りにコントロールされない生き方を送ることです。


ルーチン以外の仕事をすることを損だと思っている人は、その考えを今すぐ捨てて下さい。
心の断捨離です。


本当に損をしているのは、自分自身であることに気がつかなければなりません。

こういったことにいち早く気づくことで、より良い人生を築くことができるのです。