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[粒子線治療][陽子線治療][菱川良夫] 名誉センター長のこばなし ~がんから学ぶこと~

一般社団法人 メディポリス医学研究所
メディポリス国際陽子線治療センター 名誉センター長
菱川良夫による講演からの小話。

以前のこばなしで、指宿図書館とのご縁についてお話ししました。

第85回 患者さんが繋いでくれたご縁
http://ameblo.jp/ptrc/entry-11487934743.html


ご縁ができてから、図書館長のはからいで当センターに本を貸し出していただけるようになりました。
それら定期的に貸し出される本は、多くの患者さんを楽しませています。


先日 館長にお会いした際、私が以前Facebookに投稿した「天空の森保育園」の話で盛り上がりました。




館長は以前に保育士さんをしていたことがあるそうです。
センターに保育園があることを知り、何度も「素晴らしいですね」とお褒めくださいました。

センターの保育園では、患者さんのお子さんも預かることがあります。
それについては「画期的です」と驚かれていました。


館長が保育士をしていた頃、多くの子供達に絵本を読み聞かせていたそうです。
絵本の話をしているうちに「保育園にも絵本を貸し出したい」と言って下さいました。

私たちでは思いもつかないアイディアに、「大歓迎です!」と快諾させていただきました。


担当の部下に図書館長の考えを伝えたところ、次のメールが帰ってきました。



指宿図書館長から提案いただいていた天空の森保育園への絵本貸出ですが、昨日保育士さんと打合せて、ぜひお願いしたいとのことでしたので、館長にメールさせていただきました。

本日、センターの定期便が返却/入替のため指宿図書館へ伺うそうですが、早速本日便に間に合うように絵本もご準備下さるとのことでした。
絵本(紙芝居も含め)は、保育士さんの希望により、月10冊、2-3歳児向けのものをお願いしています。



この一件で、当センターは、指宿の皆さんの温かいご支援で成り立っていることを再認識しました。

これからも地域一丸となって、幸せな医療を提供していきたいと思っています。
先月は進行肺がんの相談が相次ぎました。

いずれも5年生存率が極めて低いとされるTNM分類4期で発見されたのですが、4期では第一選択といっても過言ではない抗がん剤治療をどうしても受けたくないとお考えの患者さん達です。

話をよく聞くと、「抗がん剤は悪」と謳う有名な本の影響を受けて、そのように考えているようです。


こういった相談を受ける度、抗がん剤治療の必要性を丁寧に説明し、
「とりあえず嫌だ嫌だと言わずに、一度は試して下さい」と伝えています。

近年の抗がん剤は、一昔前とは比較にならないほど高い効果を得ることができたり、副作用が少なかったりする場合が少なくありません。


抗がん剤で治療を行う代表的な病気は、白血病です。
白血病は血液のがんなので、一般的な画像(CT、MRI等)には映りません。

白血病のように、どこにあるかわからないがんに最大限効果を発揮するのが抗がん剤治療です。

昔は不治の病とされていた白血病ですが、多くの患者さんが治癒を期待できる時代となってきた背景には、抗がん剤の進歩と抗がん剤を上手に処方できるようになった医療の進歩があります。


局所のがんが進行すると、周りを取りまく血管内にがん細胞が漏れ出します。
その血管内に漏れたがん細胞が、どこか遠くの居心地の良い臓器に居座って大きくなるのが、遠隔転移といわれる状態です。


話を元に戻します。
こういった遠隔転移の機序は、進行肺がんでも同様に起こります。

進行肺がんの方に、最初に抗がん剤治療を頑張って受けていただきたい理由はここにあります。血管内のがん退治です。

また、抗がん剤によって目に見えている(画像に写っている)がんが縮小することも期待できます。

抗がん剤治療をきっちりと受け、最終的に残った目に見えるがんに対しては、陽子線治療がお役に立てるかもしれません。

中でも、心臓の近くにがんが残った場合、あらゆる治療で困難が予想されますが、
回転ガントリーを要する陽子線治療では、それらへのアプローチが可能となります。


今日の技術での進行肺がんに対しての陽子線治療は、抗がん剤治療と上手に組み合わせた上での治療となります。
また、抗がん剤治療を受けていただいた後でも陽子線治療が難しい場合もあり、進行肺がんに対しての陽子線治療は応用問題です。

こういった、応用問題を解決するためには、臨機応変に対応できるチーム・チーム力が大切だと考えています。

臨機応変な医療を提供できるよう、チームで技術を研鑽し、高いチーム力を維持できるよう精進してまいります。
都会と田舎を往復していると、思いもよらないことに気付かされます。
神戸と指宿の往復生活を始めて5年が経ちますが、先日はじめて気がついたことがありました。

それは、高架下や路地裏の壁、商店街のシャッターなどの落書きです。
大都会では、落書きがされている壁やシャッターをよく目にします。

随分昔になりますが、初めてこのような落書きを見たときは、驚きと憤りを感じました。
しかし最近では、それらを見ても何も感じなくなっていました。

指宿の街では、こういった落書きが見られません。
しかし、このことに5年間全く気がつきませんでした。


今回そのことに気がついて、田舎と都会の違いを実感しました。

落書きだらけの都会の街で生活していると、至る所に書かれた落書きに違和感を覚えなくなります。
体や心が落書きの街に慣れ、そのことに気がつかなくなるのです。


見えているつもりが見えていない。
聞いているつもりが聞いていない。
考えているつもりが考えていない。



このことは

第64回 見えているつもりが見えていない
http://ameblo.jp/ptrc/entry-11380009455.html

にも書いています。
これらの言葉を再確認しましょう。


自然の中でウォーキングをしていると、刻々と変わる変化に気がつかされます。

都会の商店街は変化が少なく(私が散歩する早朝は全てのお店が閉まっているからかもしれませんが)、ウォーキングでの気づきが少ないように思います。

都会で生活する人は、積極的に自然とふれあい、変化を感じてください。
「変化に気づく」という刺激は、心身の健康にも繋がっている。そんな気がします。
先日、新幹線の自動改札機に引っかかりました。
これから乗る新幹線の乗車券と特急券を重ねて入れたところ、ゲートに挟まれたのです。

同時に1枚のみ切符が排出されてきたので、
「しまった! 違う切符を入れてしまった!」と思いました。

すぐさま帰りの切符を確認したところ、問題なくありました。

次に「同じ大きさの領収書を入れたのかもしれない」と考え確認しましたが、こちらも問題なくポケットに収まっていました。


間も無く駅員さんが駆け寄ってきて改札機を開けたところ、特急券が読み取れず残っていました。
「変な入れ方をしたのかもしれない」と考え、僅かに自分を責めました。



それから予定通りの新幹線に乗り込み、予定していた駅で新幹線から在来線に乗り換える際、
再び自動改札機を通過したところ、またしてもゲートが閉まり引っかかりました。

この時初めて、特急券の自体が悪かったことに気がつきました。


ここで、どうして自分が間違っていると考えたか考察してみます。

1)買ったばかりの切符に、エラーがあるはずがない
2)機械が読み間違えをするはずがない
3)1)、2)の結果、自らの中に過ちを探した
4)3)の結果、「切符の入れ方が悪い」と思いこんだ


おそらく、短時間でこのように考えていたのでしょう。

しかし実際は、今買ったばかりの特急券自体に不具合があり、機械が読み取れないことでゲートに挟まれたのです。


次に同じことが起こった時も、私はまず自分を疑い切符を確認すると思いますが、
同時に、購入直後に読み取りができない切符があったことを思い出し、自然な対応をするつもりです。

すなわち、「切符の問題で感情に影響を与えないようにする」ということです。

これが、「自然体」の考え方です。
昨年初夏、90歳を超えるおばあちゃんがいらっしゃいました。治療の相談です。

このような場合、私はまず患者さんの理解度…
本人が、自分の病名や病気の現状、その他置かれている状況をどれぐらい理解しているのかを確かめます。

このおばあちゃんは、自分の状況をよく理解されてるようでしたので、続いてセンターを訪れた理由を聞きました。

すると、
「親戚の医師から『指宿のセンターの治療は楽だし、治療ができるのならしてもらいなさい』と言われて相談に来ました。治療ができるのであれば是非して下さい」とのこと。


難しくない治療だったので、それならということで治療を行いました。


治療終了から3か月が経過した頃、おばあちゃんが再びセンターを訪れました。

経過観察で腫瘍マーカーの数値が上がっており、CT検査をしたところ、転移が見られたようです。
そこで、再度その親戚の医師から「相談に行っておいで」とアドバイスされたとのこと。

ここでまたよく話を聞くと、病気のことも腫瘍マーカーのこともそれなりに理解されていました。


通常、このおばあちゃんと同じような転移が見られた場合、咳が出たり、息苦しかったりといった症状が出るのですが、おばあちゃんには全くそのような症状がみられず、元気そのものです。

そこで「今 何に困っていますか?」と質問したところ...

「腫瘍マーカーの話を聞いてから、そのことばかり心配して食欲がなくなった」
とのことでした。


そこで、次のようにお話ししました。

「腫瘍マーカーが高い原因は、ここです。
普通の人なら息が苦しくなるのですが、おばあちゃんはなっていません。

今後の生活で、もし息が苦しくなっても、それは親戚のお医者さんでも十分に対処ができます。手紙でそのことについてもお願いしています。

しかし、食事はしっかりと取らなければなりません。
それは私にも親戚のお医者さんにもできないことです。

今日からは食事が薬だと思って、しっかり食事をしてください。
今以上に元気になれば、ハワイにでも行けますよ」


その日の夕方、おばあちゃんの親戚の先生に電話をしました。

おばあちゃんは自宅に戻る前に先生のお宅を訪問し、「バンザイ、バンザイ」と喜ばれたそうです。


高齢者の場合は、ご本人の希望や悩みを良く聞いてあげ、臨機応変対応することも大切です。

高齢者の方が元気に一日一日を楽しめるようにしてあげたい。

私はいつもそう心がけています。