ある日、突然目の前に恐竜が出現した。

しかも、2頭。

窓辺の恐竜は雄叫びをあげながら、ゆっくり上下に動いている。

いつ何時、首(こうべ)を翻して襲ってくるかと思うと、

かなりの威圧感を感じる。

 

 

もう一頭は素知ら顔で向こうを向いているが、

気まぐれにいつこちらに倒れて来るかと、

やはり心穏やかではない。

 

 

この恐竜たちはいつまで窓辺に居座るのかと

思い煩っていたところ、

散歩に出た時、

ちょうどヘルメットを被った作業員の方がいたので聞いてみた。

6月半ばまでおわしますというお返事であった。

ははあ、かれこれ1か月は滞在なさるんですね。

「結構な威圧感なんですよねえ」と嘆いてみせたら、

「そうですよねえ」としみじみ返してくれた。

 

つまりは、

去年の大雨で閉院になった隣の病院の解体工事で、

地下深く埋まっている大きな円柱を掘り出す工事の真っ最中。

よもや悪天候の大風で倒れてくるようなことはないとは思うけれど、

カーテンを開けるたびに恐竜みたいな重機が目の前に見えるのは、

他の住民の皆さんにとってもあまり嬉しいことではない。

 

まあ、

作業を行う建設会社は十分な安全対策をとっていると信じて、

窓辺の恐竜たちとしばし共生するしかない。