先日、母のところに面会に行って、

いつものように同じことしか言わない母の相手を

かなりうんざりしながらやっていた。

ところが、

この日は突然、母が歌でも歌おうかと言い出した。

母は歌謡曲が好きで、群馬の弟の家にいた時も

一人でよく歌っていたようだ。

 

さて、何を歌おうかという話になって、

私の脳裏に浮かんだのは「朧月夜」

難聴の母の耳元に口を寄せて

「♪菜の花畑に入日薄れ」 

と歌い出すと、

母の記憶がよみがえり、

「♪見渡す山野の端 霞深し」

歌詞がすらすらと出てきた。

母は満面の笑顔。

またこの曲の歌詞が素晴らしい。

「♪春風そよ吹く空を見れば 夕月懸かりて 匂い淡いし」

端正かつ絶妙な日本語が穏やかな春の夕景を描き出し、

匂いまで呼び起こす。

 

認知症対策としても最高だと思う。

私も最近、

固有名詞など言葉が出てこないことが増えて、

愕然とすることがある。

頭がぼうっとして、すでに立派な認知症予備軍だ。

歌を歌うと、頭も心も少しすっきりする。