ウオーキングから帰って来た夫が
「最近、白鳥の姿が見えないなあ」と
言うようになったのは、先月上旬以降のことだった。
4月中旬、
北帰行に取り残されたらしい若い白鳥と
2羽で何やら語り合っていた。
満開の桜の下で2羽仲睦まじくお花見などしていたのだが、
相棒の白鳥はやはり北帰行に旅立ったらしく、
また独りぼっちになっていた。
夫はその後も心配しながら、
気をつけて白鳥を捜したそうだが、
結局、その姿を確認して最後に写真に収めたのは、
5月3日のことだった。
その時、白鳥はじっと身体を丸めてうつむいていたそうだ。
いつもなら白鳥の声をまねた夫の呼びかけに
顔を上げて応えてくれたそうだが、
その時は反応しなかったという。
いよいよ体力が弱ってきて、
もう持ちこたえられなかったのではないかと夫婦で話した。
(あくまで推測の域を出ませんが)
野生の白鳥の寿命は10年、長くて15年ほどとのこと。
夫が太平川に棲みついたこの白鳥さんを見守ったのは
3年ほどだ。
怪我か何かで北帰行を断念したようだが、
いつからここで過ごしていたのかはわからない。
近所の方々にも見守られ、愛されて、えさももらっていた。
近くに「スワン」という喫茶店もできた。
白鳥さんは自分の運命に従い、その命を立派に生き切った。
そのことに心からの敬意を覚える。