もう2年近く通っている

通勤路の途中の、

ある地点のこと。



谷あいの細い一本道、

家や店、樹々が両側から迫っていて

見えるのは自分が走っている道だけ。

頼りはその先に見える日差しだけで、

それが全てというような、

やや息苦しい感じがする。



ところが、

そこを抜けると

一転してパァッと視界が開ける。

両側とも広い田んぼや畑などが広がっていて、

その先には地平線や遠くの山々の連なりが見える。

自分の進んでいる道の方が

むしろ細く頼りないくらい。

そんな伸びやかな気分になれる。



都会の生まれ育ちの方には分かりにくいでしょうが、

田舎だと

場所によっては

建物や道路などの人工物が

ホントに見えないところがありまして。

この辺りもそんな場所です。

 

今まで何の気なしに通ってたけど、

改めて気付いた。

目からウロコが落ちるというが、

まさにそんな感じでした。

 

先ず一つ目。

 

ニンゲンなんて小さいなぁ。

広い大地のほんの一部で

せせこましく暮らしているだけじゃないか。

とも思うし。

反面、

そんな広くて荒い自然を

か弱い体で切り開き、

自分たちの領域を広げようとしている人間って

やっぱり凄いなぁ。

とも思う。

 

二つ目。

 

道を進んでいる時は

その道しかないような気がするけど、

目的地に着くための手段ならば、

その道以外にも周りにいくらでもある。

その道自体、

誰かが歩いた後で出来た道であって、

必ずしもその道がベストとは言えないのかも。

以上2つでした。

 

文章にしてみると大したことはないようだが、

ものの見方で

気持ちや受け取り方がガラリと変わったことがあった。

それを書いておきたかっただけです。

仕事や

この年齢になって向き合うことになった色々な事。

そんなものが

ちょっとした心境の変化をもたらしたのかも。

 

 
仕事では
先日もご案内した通り、
施設の管理者を拝命しました。
本来は一職人でして
ガラでもウツワでもないんですが、
評価して頂いたことは有難いことと考え
お受けすることにしました。
色々ありますが
頑張ってます。
来年はもう一歩進んだ展開が出来ればと思います。

家庭の面ですと、
初夏に妻の祖父が他界しました。
お世話になりました。
また私の父が年齢相当になっておりまして、
気に掛けとく必要がありますが、
それ以外は皆んな元気です。
子供たち二人は受験の谷間の年で
学業と部活とに勤しんだようです。
それぞれ来年に向けてチャレンジです。

最後に私の趣味活動もろもろ。
今年は公的な音楽活動をボツボツ再開しました。
マツムラレコードの高草木店長さんのお世話で
山鹿のイベントや
インストアライブの機会を頂きました。
有難うございます。
今後も少しずつ続けていければと思います。
ミステリもスローペースですが読んでますので
この調子で。
囲碁はなかなか勉強が進みません。
頑張らないとです。
フィットネスもなかなか時間が取れません。

以上でした。
来年もまた頑張ります。
皆様宜しくお願いします。

残暑もいよいよ収まってきました。
読書の秋です。

今回読了したのはこれ。
中村文則「去年の冬、きみとの別れ」
http://www.amazon.co.jp/%E5%8E%BB%E5%B9%B4%E3%81%AE%E5%86%AC%E3%80%81%E3%81%8D%E3%81%BF%E3%81%A8%E5%88%A5%E3%82%8C-%E4%B8%AD%E6%9D%91-%E6%96%87%E5%89%87/dp/4344024575

新聞やTVの書評でベタ褒めされたのは知ってたが、
書店平積みを見つけて
買ってしまいました。

恥ずかしながら不勉強で名前を知らない作家さんだったが
以前発表した「掏摸」という作品は
国内外で絶賛されたとか。

ライターの「僕」は、ある猟奇殺人事件の被告に面会に行く。
彼は、二人の女性を殺した容疑で逮捕され、死刑判決を受けていた。
調べを進めるほど、事件の異様さにのみ込まれていく「僕」。
彼はなぜ事件を起こしたのか?
何かを隠し続ける被告、
男の人生を破滅に導いてしまう被告の姉、
大切な誰かを失くした人たちが群がる人形師。
それぞれの狂気が暴走し真相は迷宮入りするかに思われた。だが―、
というのが
裏帯からの抜粋ストーリー。

ほぼ一気読み。
凄い。
壮絶。
尖っていて
目を背けたくなるほど残酷で
しかし止めどなく哀しい。
そんな物語だった。

いつものように
以降若干のネタバレあります。
未読の方はご注意を。

犯人が写真家という表現者であり、
若い女性を焼き殺しているという設定は、
作中で幾度も語られる通り、
芥川龍之介の「地獄変」そのものです。

また、
カポーティ―の有名な「冷血」も
作中にしばしば取り上げられています。
最近ルポや小説、映画などで数多く見られますが、
本書の構成である
ジャーナリストが収監中の殺人犯にインタビューして
事件の実態を明らかにしていくというスタイルは、
「冷血」に倣ったものだし、
それを追うジャーナリストの精神破壊という部分でも
共通している。

一方で、
様々な取材の場面や資料が積み上げられるが、
微妙な相違や違和感を含んでいるために、
何故か事件の焦点が絞られてこず、
逆に謎が深まっていくような進行には
湊かなえの作品群のニュアンスを感じます。

また、
個人的な感触としては
「冷血」は勿論だが、
事件を追っていくうちに
追うものが追われるものへと変貌していく
安部公房の「燃え尽きた地図」にも通じるものを感じました。
また、
複数の登場人物たちが語る
「領域」というニュアンスの言葉からは
京極夏彦の作品群や
映画「ブラックスワン」の匂いを嗅ぐことも出来るようです。

読み終えてみると、
作品に登場する人物全てに
どこかしらの幾ばくかの狂気を感じさせます。
しかしそうでありながら
多くの登場人物は
恙なく日常生活を送っている。
所謂「領域」を乗り越えることなく生きているのです。
しかし、
もっとも常識的かと思われる言動を取っている人物こそが
実は最も狂っていて
その「領域」を乗り越えている。
しかもその理由が、
余りにも哀しすぎて切ないし
実はこの物語の根幹を成しているという点が秀逸と思います。
そしてこれらの点から、
この作品は
登場人物や読者のみならず
実は主人公自身を最も欺いている、
否、自ら狂うことでそれを成立させている。

人間とは
かくも強く
同時に哀しく
狂気を孕んだ生き物なのだなぁと。

そして最初の一文。
最後の一文。
否、タイトルからして
それを全て言い尽くしている。

ミステリーとしてのアイデアとしては
特筆すべきものではありません。
しかし、
先ほど述べた
人間の業というか狂気と重ね合わせて見せる、
その筆力や言葉の力は只者ではないと思います。
決して口触りの良い物語ではないにも関わらず、
ページを繰る手を止めることが出来ずに
一挙に読み進められさせてしまったのは
そういうことではないでしょうか。

次は「掏摸」にチャレンジしてみようかなぁ。