宮沢賢治 龍と詩人
物語の中で高名な詩人、アルタが
見事な詩を歌ったスールダッタを
賛辞して贈った偈である。
スールダッタがどんな詩を披露したのかは、
明かされていない。しかし
この詩から鑑みても、とても見事で、
美しい詩だったのだろうと思われる。
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風がうたひ雲が応じ
波が鳴らすそのうたを
ただちにうたふスールダッタ
星がそうなら(ろ)うと思ひ
陸地がそういふ形をとろうと覚悟する
あしたの世界に叶ふべき
まこと(誠)と美との模型をつくり
やがては世界をこれにかなわしむる預言者、
設計者スールダッタ
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スールダッタは、
そのまま自然を表現したのではなく、
自分が心で感じたものを、自然と共に、(友に)、
無理なく表現したが故に、「設計者」という言葉が
使われていると思われる。
「創造者」としてもよいと思うが、
その創造は、おのずと自然の意に
背かないことが必然とされるだろう。
自然と共に、新たな世界をつくるのだ。
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新たな詩人よ
嵐から雲から光から
新たな透明なエネルギーを得て
人と地球にとるべき形を暗示せよ
宮沢賢治 生徒諸君に贈る
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