王維 | ☆ 俺たちにはつきがある!☆彡

☆ 俺たちにはつきがある!☆彡

  ~ The Moon is always with us ~

■過香積寺 王維(701~761) 唐代(盛唐)の詩人 画家でもあり、水墨画の開祖とも呼ばれる。

不知香積寺  知ら不(ず)香積寺(こうせきじ)
数里入雲峰  数里雲峰(すうりうんぽう)に入(い)る
古木無人径  古木人径無(こぼくじんけいな)し
深山何処鐘  深山何処鐘(しんざんいづこのかね)ぞ
泉声咽危石  泉声危石(せんせいきせき)に咽(むせ)び
日色冷青松  日色青松(にっしょくせいしょう)に冷(ひややか)なり
薄暮空潭曲  薄暮空潭(はくぼくうたん)の曲(くま)
安禅制毒竜  安禅毒竜(あんぜんどくりゅう)を制(せい)す


香積寺は一体何処にあるのだろう
山道を辿るうち、早くも雲湧く峰峰の中へと分け入る心地
辺りはうっそうと木々が生い茂り、人の通う道も無い
何処からか鐘の音が聞こえてきた
泉の水は高くそそり立つ岩に当たって、むせぶように響く
日の光は青い松に射して冷ややに輝く
私は夕闇迫る人気のない淵の辺で、心静かに座禅を組んで煩悩をしずめるのだ

※香積寺・・・名刹
王維は30歳で妻を失い、それから仏教に帰依した。再婚もしなかった。

■竹里館

独坐幽篁裏  独り坐す幽篁(ゆうこう)の裏(うち)
弾琴復長嘯  弾琴復(だんきんま)た長嘯(ちょうしょう)
深林人不知  深林(しんりん)に人知ら不(ず)
明月来相照  明月(めいげつ)来たって相(あ)い照らす


ただ一人静かな竹林の中に座って
琴を爪弾き詩を口ずさむ
この奥深い竹林の中の楽しみを誰も知らない
ただ明月だけが私を訪ね照らしてくれる


■終南山

太一近天都  太一天都(たいいつてんと)に近(ちか)く
連山致海隅  連山海隅(れんざんかいぐう)に致る
白雲廻望合  白雲望(ぼう)を廻(めぐ)らせば合し
青靄入看無  青靄(せいあい)看(かん)に入(い)って無し
分野中峰変  分野(ぶんや》中峰(ちゅうほう)変じ
陰晴衆壑殊  陰晴衆壑(いんせいしゅうがく)殊(こと)なる
欲投人処宿  人処(じんしょ》に投(とう)じ宿《しゅく)せんと欲し
隔水問樵夫  水を隔(へだ)てて樵夫(しょうふ)に問う


終南山は都近くに聳え
連なる山は海にまで続く
山にかかる白雲は眺めるうちに視界を閉ざし
あおい靄はその中に入るとかえって見えない
峰のかたちは様々に姿を変え
天候は谷によって異なる
一夜の宿を得ようと岸のきこりに声をかける


■山居秋瞑

空山新雨後  空山(くうざん)新雨の後(のち)
天気晩来秋  天気晩来(てんきばんらい)の秋(あき)
名月松間照  名月松間(しょうかん)に照り
清泉石上流  清泉石上(せいせんせきじょう)に流る
竹喧帰浣女  竹喧(たけかしましく)して浣女(かんじょ)帰る
蓮動下猟舟  蓮動(はすうご)きて猟舟(りょしゅう)下る
随意春芳歇  随意(ずいい)なり春芳(しゅんぽう)の歇(や)むところ
王孫自可留  王孫(おうそん)自ら留(とどま)る可


雨のあがったあとの物寂しい山
夕暮れなるとひと際秋らしい
月の光は松の葉越しに照り映え
清らかな泉は水は石の上を流れる
竹がざわめきくと思ったら洗濯を終えた娘がお帰りらしい
川面の蓮が揺れたのは、川を下る漁舟の波のせい
春の花など勝手散ってしまうがいい
私はこの秋の山中に留まっていたいのだ


■送元二使安西

渭城朝雨滬軽塵  渭城(いじょう)の朝雨軽塵(ちょううけいじん)を滬(うるお)し
客舎青青柳色新  客舎青青柳色新(かくしゃせいせいりゅうしょくあらた)なり
勧君更尽一杯酒  君に勧む更に尽せ一杯の酒
西出陽関無故人  西のかた陽関(ようかん)を出(いず)れば故人無からん

今朝の渭城の町は夜来の雨が土埃をしっとりと潤し
芽吹いたばかりの旅籠の柳は雨を受けていっそう青々としている
旅立つ君よ さあもう一杯酒を飲みたまえ
はるか西の関所を越えると
もう一緒に酒を酌み交わす友人は居ないのだから

陽関三畳・・・別れの際、この詩を三度詠む慣わしあったのだという。
送別の師の代表作。

■酌酒与裴迪

酌酒与君君自寛  酒を酌(く)んで君に与う君自ら寛(ゆるう)うせよ
人情飜覆似波瀾  人情の飜覆波瀾(はんぷくはらん)に似たり
白首相知猶按剣  白首(はくしゅ)の相知(そうち)すら猶(な)を剣を按じ
朱門先達笑弾冠  朱門(しゅもん)の先達(せんだつ)は弾冠(だんかん)を笑《わろ)う
草色全経細雨湿  草色全く細雨を経て湿(うるお)い
花枝欲動春風寒  花枝動(かしうご)かんと欲して春風寒し
世事浮雲何足問  世事(せいじ)浮雲(ふううん)何ぞ問うに足らんや
不知高臥且加食  知不(しらず)高臥(こうが)して且(しばら)く食(さん)を加えんのみ

さあ、酒をついで差し上げる
一杯飲んでゆったりしなさい
人情なんて打ち寄せる波のようにくるくる変わるもの
古くから友人でだろうと、利害の為には剣を交えることだってあるのだから
自然界は時の流れに従って動き人様々に生きている
そんなことを気にせず、関わらずに眺めるだけにしておくのがいい

人の世は浮雲のように当てのないものだから
あれこれ考えないで超然としているのが一番だ

■帰嵩山作

清川帯長薄  清川長薄(せいせんちょうはく)を帯び
車馬去間間  車馬(しゃば)去って間間(かんかん)たり
流水如有意  流水意(りゅうすいい)有るが如く
暮禽相与還  暮禽(ぼきん)相い与(とも)に還る
荒城臨古渡  荒城古渡(こうじょうこと)に臨み
落日満秋山  落日秋山(らくじつしゅうざん)に満つ
迢逓嵩高下  迢逓(ちょうてい)たり嵩高(すうこう)の下(もと)
帰来且閉関  帰来且(きらいしばら)く関を閉(とざ)さん


嵩山のふもとの清んだ川は草木の間を縫って流れ
川沿いを行く車馬はゆるゆると進む
流れる水も何やら懐かしげであり
夕空を飛ぶ鳥たちは連れ立ってねぐらに帰る
寂れた城壁が古い渡し場に面して立ち
夕陽の光は秋の山に満ち満ちている
遥かなる嵩山の麓
私は其処に帰っていき、しばらく門を閉ざし自分を見つめなおす事にしよう

※嵩山は中国五岳の一つ。仏教寺院の少林寺がある。