人生のとある時期、ゲーテの『若きウェルテルの悩み』を機に、
『カルメン』や『マノン・レスコー』、『椿姫』等、愛の諸相を求め本の中を彷徨う内、
考え方が年寄り染みてしまった。
慎重である事は大事だ、でもこれは違う。
何をするにも懐疑的で、ふと何か直観的に思い立っても体を動かすのが億劫で、そして考えてしまう「これは本当に必要な事なのか」と。で、結局やらない。
でも何が本当に大切で必要な事なのか、その答えは考えて出せるものでは無いだろう。だから後になって「あの時ああしてれば…あそこでこうしてれば…」と後悔してばかりいる。感覚がズレてしまったのだ。
あの頃は違った。何をするにも挑戦的で、過ちは学習の連続だった。
実際、日々精一杯本気で生きていれば、たとえどんな決断を下したにせよ、最後には、その結果が、そんなに致命的なものでは無かったと思える様な事ばかりだろう。
変わらなくては。今のままでは、心が死んでしまう。いや、もう一度死んでしまっているのかも知れないな。
でもその為に、純粋だった頃の行為を単にその上辺だけ真似てみたり、
人の道を外れる様な極端な、「あの日 見つけたはずの真実とはまるで逆」の方向へと
歩みを進めたりしてはならないのだ、という気が、心の中で微かにするのだ。
- Σigma